http://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-40055659
エベレスト登山関係者の間で、登頂前のキャンプ地での酸素ボンベの盗難が問題となっている。
酸素ボンベは天候や通行の遅延、下山を考慮した量が準備されることから、盗難によって登山者に命の危険が生じる可能性があると、関係者らは指摘する。
今シーズン最後の登山者らが登頂に挑戦するのに適した天候を待つなかで、今回の問題が指摘された。
専門家らは、経験の浅い人や能力が不十分なシェルパを含む多くの登山者が訪れるようになったことも、現在の状況に影響していると指摘した。
エベレストから戻ったばかりのニマ・テンジ・シェルパさんはBBCの取材に対し、「深刻な問題になりつつある」と語った。「酸素ボンベが消えてなくなったと遠征隊から繰り返し聞いたが、命にかかわる問題だ。背負っていた分を登山中に使い切ってしまったがまだ頂上にたどり着いていない場合や、下山時のために取っておいたものがなくなってしまった場合は、特にそうだ」
外国人登山家たちは、盗難の経験をソーシャルメディアに投稿している。
遠征隊のティム・モーズデール隊長は5月22日、「我々の備品からまた酸素ボンベが7本なくなった」とフェイスブックに投稿した。
「今回はサウスコル(標高7900メートル地点にある登頂直前のキャンプ地「キャンプ4」)だった」
「前日にローツェを登頂した(シェルパの)ペンバさんが、サウスコルまで行って補給品を確認する元気があったおかげで、教えてもらえた。しかし、数日後に到着した時にまだあるだろうか。それとも、『魔法の空気』のボンベは、さらに数本なくなっているのか」
モーズデール氏は以前にも、エベレストに近いローツェ山で同様の出来事があったと投稿している。
「我々の酸素が使われていると分かっていれば、補給はできる。しかし、ただやってきて持ち去ってしまうのでは、登頂隊にとって問題になるだけでなく、ほかの登山者たちの命も危険に陥れることにもある」
懸念すべき傾向
今シーズンに入って、死亡者数は10人に上っているとの情報があるものの、ネパール当局はこれまでに5件しか確認できていないとしている。酸素ボンベの盗難に関連した死亡例はない。
ネパール山岳ガイド協会(NNMGA)のプルバ・ナムゲル・シェルパ氏は、「盗人がテントの鍵を壊して酸素ボンベや食料どころか、料理用ガスでさえ盗む状態で、我々に何ができるというのか」と話す。
「こうした事態が相次いでいる。盗難のせいで、登山者が登頂せずに戻らざるを得なくなったことがある。命綱のボンベがなくなっていると知ったら、まずはベースキャンプに戻るからだ」
ニマ・テンジ・シェルパ氏は、2012年にシェルパを務めた際に補給品が盗まれたために、顧客の登山者に酸素ボンベを譲らなくてはならなかったと語った。
「山から下っていた時に、ボンベがなくなっていることが分かった。顧客は自分のボンベをすでに使い切っていたので、危険だったものの私のボンベを彼にあげた。下のキャンプにたどり着けたのは幸運だった」
(リンク先に続きあり)
ナビーン・シン・カドカ環境担当特派員、BBCワールド
(英語記事 Everest climbers worried about oxygen bottle theft)
2017/06/06
エベレスト登山関係者の間で、登頂前のキャンプ地での酸素ボンベの盗難が問題となっている。
酸素ボンベは天候や通行の遅延、下山を考慮した量が準備されることから、盗難によって登山者に命の危険が生じる可能性があると、関係者らは指摘する。
今シーズン最後の登山者らが登頂に挑戦するのに適した天候を待つなかで、今回の問題が指摘された。
専門家らは、経験の浅い人や能力が不十分なシェルパを含む多くの登山者が訪れるようになったことも、現在の状況に影響していると指摘した。
エベレストから戻ったばかりのニマ・テンジ・シェルパさんはBBCの取材に対し、「深刻な問題になりつつある」と語った。「酸素ボンベが消えてなくなったと遠征隊から繰り返し聞いたが、命にかかわる問題だ。背負っていた分を登山中に使い切ってしまったがまだ頂上にたどり着いていない場合や、下山時のために取っておいたものがなくなってしまった場合は、特にそうだ」
外国人登山家たちは、盗難の経験をソーシャルメディアに投稿している。
遠征隊のティム・モーズデール隊長は5月22日、「我々の備品からまた酸素ボンベが7本なくなった」とフェイスブックに投稿した。
「今回はサウスコル(標高7900メートル地点にある登頂直前のキャンプ地「キャンプ4」)だった」
「前日にローツェを登頂した(シェルパの)ペンバさんが、サウスコルまで行って補給品を確認する元気があったおかげで、教えてもらえた。しかし、数日後に到着した時にまだあるだろうか。それとも、『魔法の空気』のボンベは、さらに数本なくなっているのか」
モーズデール氏は以前にも、エベレストに近いローツェ山で同様の出来事があったと投稿している。
「我々の酸素が使われていると分かっていれば、補給はできる。しかし、ただやってきて持ち去ってしまうのでは、登頂隊にとって問題になるだけでなく、ほかの登山者たちの命も危険に陥れることにもある」
懸念すべき傾向
今シーズンに入って、死亡者数は10人に上っているとの情報があるものの、ネパール当局はこれまでに5件しか確認できていないとしている。酸素ボンベの盗難に関連した死亡例はない。
ネパール山岳ガイド協会(NNMGA)のプルバ・ナムゲル・シェルパ氏は、「盗人がテントの鍵を壊して酸素ボンベや食料どころか、料理用ガスでさえ盗む状態で、我々に何ができるというのか」と話す。
「こうした事態が相次いでいる。盗難のせいで、登山者が登頂せずに戻らざるを得なくなったことがある。命綱のボンベがなくなっていると知ったら、まずはベースキャンプに戻るからだ」
ニマ・テンジ・シェルパ氏は、2012年にシェルパを務めた際に補給品が盗まれたために、顧客の登山者に酸素ボンベを譲らなくてはならなかったと語った。
「山から下っていた時に、ボンベがなくなっていることが分かった。顧客は自分のボンベをすでに使い切っていたので、危険だったものの私のボンベを彼にあげた。下のキャンプにたどり着けたのは幸運だった」
(リンク先に続きあり)
ナビーン・シン・カドカ環境担当特派員、BBCワールド
(英語記事 Everest climbers worried about oxygen bottle theft)
2017/06/06