http://www.afpbb.com/articles/-/3193051?cx_part=latest
「モバイル決済はお断りだよ!」 上海の頑固ワンタン店
2018年10月15日 12:06
発信地:中国 [ 中国 中国・台湾 ]
【10月15日 CNS】上海市静安別荘の一角にある小さなワンタン店。開店以来30年余り、毎日午前6時からの開店に合わせ、午前5時15分には人が列を作る。
■長屋から店舗へ移っても変わらない味
店主の名前は蔡さんといい、皆は「蔡師匠」と呼ぶ。
蔡師匠のワンタン作りの腕は、先代の老師匠から学んだものだ。数十年前の店の仕事は、今では想像もつかぬほど辛かったという。毎朝午前4時半、石炭の粉を丸めた炭団(たどん)を買いに行く。帰ってくると炉に火を入れる。修行に耐えた蔡さんは、老師匠から認められ、ワンタン作りのこつを少しずつ学んだ。老師匠の教えに自分の工夫を重ね、技を磨いた。
本物の味は人を引き付けるものだ。蔡師匠のワンタン店は少しずつ大きくなり、奥の自分の休憩スペースまで店の一部へと拡張。その後、区画整備のあおりで営業ができなくなる。
2か月間の営業停止の間、もう苦労をして働く必要はない、やめる潮時だと思い悩んだ蔡師匠だったが、古い友人からの問い合わせの電話や、いつ営業を再開するのかと尋ねてくるなじみの客を見て心が動いた。
■私を信じてくれる人がたくさんいるから・・・と再開を決心
隣近所の助けもあり、蔡師匠は、コーヒーショップやピカピカの菓子屋が並ぶ威海路(Weihai Lu)で小さな店舗を探し、ワンタン店を続ける決心をした。
「貯蓄をほとんどつぎ込んでしまったが、皆がワンタンを食べに来てくれるので、やりがいがある」と蔡師匠は語る。
■ノウハウは単純、でも得難い
黄色の薄焼き卵、わずかに焦がした香り、豚骨で煮出したスープ。香りが辺りに漂う。スープを吸った厚めののりが一番上に。うっとりとさせる味だ!
ワンタンをゆでる時間にはこだわりがある。ワンタンの具に火が通り、皮にまだコシが残っている状態で鍋からすくい出し、どんぶりの中へ。ワンタンの皮は熱さの残るスープの中で引き続き加熱され、客が口の中に入れる頃、ワンタンの食感が最適となる瞬間を迎える。
手作りのワンタンは、皮の隙間から具の中身があふれ出ることがあるが、具がスープを吸って味がまた深くなる。スープの中にわずかに残るこしょうの香りがまた何とも言えず鼻をくすぐる。
■秘訣(ひけつ)は「新鮮」の2文字
新鮮なものこそがおいしい。これが、蔡師匠のワンタンが毎日売り切れる理由だ。蔡師匠が作るワンタンの具は、誇りだ。肉汁の新鮮さを出すために、ネギや醤油、調理酒は一切入れない。
他のワンタン店と異なるところは、蔡師匠のワンタンの皮は特別に作ったもので、材料の中に卵白を入れる。火の通ったワンタンは、黄色っぽく見える。ワンタンの皮が店に運び込まれると麺棒で伸ばす。これでワンタンの皮がさらに薄くなり、皮のコシが強くなり、食感が良くなる。
「最近のワンタン店は、ネットで評判の「網紅店」やら何やらたくさんあるが、生き残るためには工夫が必要。一杯一杯、心を込めてワンタンを作るだけさ」と蔡師匠。
蔡師匠自身も想像もしなかったことだろうが、同店が「電子決済は受けない」のニュースが偶然に広がり、逆にこの小さな店を「網紅店」へと押し上げ、もともと待てば食べられたワンタンが、待っても食べられない(かもしれない)ワンタンになった。
外界の状況は変わっても、蔡師匠の毎日は頑固一徹、何も変わらない。作る数には限りがあり、売り切れ御免で、支払いは現金だけだ。
■「現金が一番!」
蔡師匠がモバイル決済を受けないことを「名をあげるための演技」だと言う人がいるが、遠路はるばる食べに来る人もいる。現金しか受け取らないとか、並ばねば食べられないということは、味が本当に良いからだろうと言う人もいる。
これらの「議論」を耳にして、蔡師匠は屈託がない。「アリペイは絶対に使わない。死んでも使わない。あんなものは信じられない。ジャック・マー(Jack Ma)やら馬化騰(Pony Ma)やら、なんじゃい! 現金が一番だ」(c)CNS/JCM/AFPBB News
「モバイル決済はお断りだよ!」 上海の頑固ワンタン店
2018年10月15日 12:06
発信地:中国 [ 中国 中国・台湾 ]
【10月15日 CNS】上海市静安別荘の一角にある小さなワンタン店。開店以来30年余り、毎日午前6時からの開店に合わせ、午前5時15分には人が列を作る。
■長屋から店舗へ移っても変わらない味
店主の名前は蔡さんといい、皆は「蔡師匠」と呼ぶ。
蔡師匠のワンタン作りの腕は、先代の老師匠から学んだものだ。数十年前の店の仕事は、今では想像もつかぬほど辛かったという。毎朝午前4時半、石炭の粉を丸めた炭団(たどん)を買いに行く。帰ってくると炉に火を入れる。修行に耐えた蔡さんは、老師匠から認められ、ワンタン作りのこつを少しずつ学んだ。老師匠の教えに自分の工夫を重ね、技を磨いた。
本物の味は人を引き付けるものだ。蔡師匠のワンタン店は少しずつ大きくなり、奥の自分の休憩スペースまで店の一部へと拡張。その後、区画整備のあおりで営業ができなくなる。
2か月間の営業停止の間、もう苦労をして働く必要はない、やめる潮時だと思い悩んだ蔡師匠だったが、古い友人からの問い合わせの電話や、いつ営業を再開するのかと尋ねてくるなじみの客を見て心が動いた。
■私を信じてくれる人がたくさんいるから・・・と再開を決心
隣近所の助けもあり、蔡師匠は、コーヒーショップやピカピカの菓子屋が並ぶ威海路(Weihai Lu)で小さな店舗を探し、ワンタン店を続ける決心をした。
「貯蓄をほとんどつぎ込んでしまったが、皆がワンタンを食べに来てくれるので、やりがいがある」と蔡師匠は語る。
■ノウハウは単純、でも得難い
黄色の薄焼き卵、わずかに焦がした香り、豚骨で煮出したスープ。香りが辺りに漂う。スープを吸った厚めののりが一番上に。うっとりとさせる味だ!
ワンタンをゆでる時間にはこだわりがある。ワンタンの具に火が通り、皮にまだコシが残っている状態で鍋からすくい出し、どんぶりの中へ。ワンタンの皮は熱さの残るスープの中で引き続き加熱され、客が口の中に入れる頃、ワンタンの食感が最適となる瞬間を迎える。
手作りのワンタンは、皮の隙間から具の中身があふれ出ることがあるが、具がスープを吸って味がまた深くなる。スープの中にわずかに残るこしょうの香りがまた何とも言えず鼻をくすぐる。
■秘訣(ひけつ)は「新鮮」の2文字
新鮮なものこそがおいしい。これが、蔡師匠のワンタンが毎日売り切れる理由だ。蔡師匠が作るワンタンの具は、誇りだ。肉汁の新鮮さを出すために、ネギや醤油、調理酒は一切入れない。
他のワンタン店と異なるところは、蔡師匠のワンタンの皮は特別に作ったもので、材料の中に卵白を入れる。火の通ったワンタンは、黄色っぽく見える。ワンタンの皮が店に運び込まれると麺棒で伸ばす。これでワンタンの皮がさらに薄くなり、皮のコシが強くなり、食感が良くなる。
「最近のワンタン店は、ネットで評判の「網紅店」やら何やらたくさんあるが、生き残るためには工夫が必要。一杯一杯、心を込めてワンタンを作るだけさ」と蔡師匠。
蔡師匠自身も想像もしなかったことだろうが、同店が「電子決済は受けない」のニュースが偶然に広がり、逆にこの小さな店を「網紅店」へと押し上げ、もともと待てば食べられたワンタンが、待っても食べられない(かもしれない)ワンタンになった。
外界の状況は変わっても、蔡師匠の毎日は頑固一徹、何も変わらない。作る数には限りがあり、売り切れ御免で、支払いは現金だけだ。
■「現金が一番!」
蔡師匠がモバイル決済を受けないことを「名をあげるための演技」だと言う人がいるが、遠路はるばる食べに来る人もいる。現金しか受け取らないとか、並ばねば食べられないということは、味が本当に良いからだろうと言う人もいる。
これらの「議論」を耳にして、蔡師匠は屈託がない。「アリペイは絶対に使わない。死んでも使わない。あんなものは信じられない。ジャック・マー(Jack Ma)やら馬化騰(Pony Ma)やら、なんじゃい! 現金が一番だ」(c)CNS/JCM/AFPBB News