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2018/02/12
米ニューヨーク州司法長官は11日、映画製作会社ワインスティーン・カンパニーを提訴した。創設者で大物プロデューサーのハービー・ワインスティーン氏(65、昨年10月に解雇)による性的加害行動から、同社が従業員を守らなかったと同州は主張している。会社とワインスティーン氏のほか、弟で同社最高経営責任者のロバート氏も訴えられた。

ニューヨーク州司法省は、ワインスティーン氏が女性従業員を暴行したほか、従業員を殺害すると言葉で脅し、ワインスティーン・カンパニーが従業員を保護しなかったのは、ニューヨーク州の公民権法や人権、商法に違反していると訴えている。
ワインスティーン氏の弁護人は、「公平な取り調べ」がされれば、言われている被害内容の多くは法的根拠に欠けていることが分かるはずだとコメントした。

ワインスティーン・カンパニーはコメントしていない。
ワインスティーン氏は昨年秋に、米紙ニューヨーク・タイムズが自分の長年にわたる問題行動疑惑を報道した後、「同僚に対する過去の振る舞いが多くの苦痛を与えたと受け入れ、心から謝罪する」と声明を出した。しかし、多くの女性の主張は事実ではないと否定し、強姦疑惑については、同意のない行動はしていないと反論している。
著名女優を含む50人以上の女性が被害を主張し、米英両国の警察が捜査に着手しているが、ワインスティーン氏は逮捕や起訴はされていない。

訴訟の内容は

ニューヨークのエリック・シュナイダーマン州司法長官は、「我々はただいま、ワインスティーン・カンパニーに対する公民権訴訟を提起した。同社がいかなる形で売却されるとしても、被害者は十分に補償され、従業員は守られなくてはならないし、性的問題行為を容認していた者たちが不当な経済的利益を得ることがあってはならない」とツイートした。
シュナイダーマン長官は、被害を主張する人たちへの補償に加え、懲罰的罰金も含む損害賠償金を請求する方針。請求額は明らかにしていない。
訴状によると、ワインスティーン氏は同社が雇う女性たちを長年にわたり性的に暴行し、いやがらせを重ねたとされる。また弟ロバート・ワインスティーン氏をはじめ同社重役たちは、従業員から証拠を提示されても、ハービー氏の問題行動から従業員を守る措置を講じなかったという。
州司法省は、ワインスティーン氏による不法行為疑惑を4カ月にわたり捜査してきたと述べた上で、具体的な訴えの内容を次のように例示している。

・従業員に「お前を殺してやる」や「お前の家族を殺してやる」と言うなど、言葉で脅迫した
・ワインスティーン氏と「イベントに同行」し「性的成果の達成を支援するため」、女性を「応援担当」として使った
・社内での昇進と引き換えに性的行為を要求した
・「車内に必ずコンドームと勃起不全治療薬の注射を常備するよう」運転手たちに要求した
・勤務時間中もその後も「性的活動のための人材」を手配するようアシスタントたちに要求した
・ワインスティーン氏の契約は、性的不法行為について禁止するのではなく、罰金を科すという項目が含まれていた。これは、性的加害行動に「対価をつけたに等しい」とニューヨーク州は書いている

州のこうした提訴内容について、ワインスティーン氏の顧問弁護士ベン・ブラフマン氏は、自分の依頼人の行動に「問題がなかったわけではない」ものの、「犯罪性はなかった」と反論している。
「訴訟の最後には、ハービー・ワインスティーンが他のどの業界重鎮よりも女性の要職登用に積極的で、ミラマックスにも(ワインスティーン・カンパニー)にも、差別はまったくなかったことが明らかになる」とブラフマン弁護士は主張した。

ワインスティーン・カンパニーにとっての意味は

ワインスティーン・カンパニーは倒産の危機に直面し、出資者との協議を続けている。
シュナイダーマン長官は、捜査は続いているものの、この時点で公民権訴訟を提起することにしたのは、同社が売却されてしまえば被害を主張する人たちに適切な補償が支払われず、「問題行動をとった当事者や、それを可能にした者たち」が売却益を得るかもしれないと懸念したからだと説明した。
実業家のマリア・コントレラス・スウィート氏が、同社を5億ドル(約550億円)で買収する意向だと報道されてきたが、ニューヨーク州による提訴が報道されると、買収交渉は保留になったという。
米芸能業界誌バラエティによると、投資家たちは訴訟によって買い取り条件が変化するのを嫌い、交渉を一時中止したという。

(英語記事 Harvey Weinstein: New York state sues Weinstein Company)