07:20 讀賣新聞
https://www.yomiuri.co.jp/national/20190203-OYT1T50179/
鹿児島県内で2018年に確認されたアカウミガメなどのウミガメの上陸・産卵回数が前年に比べてほぼ半減していたことが、県のまとめで分かった。
上陸は1988年の統計開始以来3番目に少なく、産卵も過去10年で最少だった。県は「原因は不明」としている。市町村別では、屋久島町がいずれも最も多かった。(中村直人)
県自然保護課によると、調査は産卵期の2018年4〜9月、海に面する県内39市町村で実施。自治体が委嘱した「ウミガメ保護監視員」やボランティアが、砂浜の足跡や巣を調べるなどした。その結果、上陸は32市町村、産卵は29市町村で確認された。
上陸は2731回で、前年比47・3%減となった。市町村別でみると、北太平洋有数のアカウミガメの産卵地・永田浜がある屋久島町が476回(前年1244回)でトップで、与論町の377回(同435回)、中種子町の293回(同694回)と続いた。県本土では日置市の206回(同325回)が最多だった。
産卵は同44・5%減の1718回。市町村別では、屋久島町259回(同596回)、中種子町242回(同486回)、与論町213回(同281回)の順だった。鹿児島市は上陸・産卵とも確認できなかった。
上陸・産卵の減少について同課の羽井佐幸宏課長は「原因を推測するのは難しい」とした上で、「今後もボランティアや自治体に協力してもらい監視を続けていく」と話した。
◆「ここ数年減少傾向」識者
県沿岸部に数多く上陸するアカウミガメの現状について、日本ウミガメ協議会(大阪)の松沢慶将会長に聞いた。
――国内での上陸・産卵回数はどう推移しているか。
「1990年代は減少したものの2000年代に入ると緩やかに回復し、07、08年頃に爆発的に増えた。12、13年頃にピークを迎え、ここ数年は減少傾向にある」
――変動する理由は。
「戦後の食糧難の時代には一部の地域で住民が卵を食べていた。1970年代頃からの保護活動でそういうことがなくなり、個体数が回復した。減少の要因として漁船の定置網や、はえ縄にかかって溺死する『混獲』の影響が指摘されている。地球温暖化に伴う海洋環境の変化の影響も受けているかもしれない」
――今後の対策を。
「人為的な要因と環境的な要因が複雑に絡んでいる可能性があり、因果関係を一つ一つ整理した上で議論する必要がある」
◆アカウミガメ=主な産卵地は西日本の太平洋側や南西諸島で、約6割は鹿児島県に集中。国内で孵化ふかした個体は太平洋を横断して米国やメキシコで成長する。
体長約70センチ〜1メートル。下あごが発達し、甲殻類や貝類などを食べる。雌は成熟までに平均で約40年かかるとされる。環境省のレッドリストで絶滅危惧1B類に分類されている。