>>288
朝鮮の暴動は何と云つても歴史に於ける一大汚点である。我々は之を拭ひ去
る為めに非常の決心を堅むるの必要がある。之が始末に成功するとせざるとは、
ただに東洋の先進国としての面目に関するのみならず、尚ほ今後の国運の発展にも
重大の関係がある。然らば如何の善後策を以て之に臨むべきか。
 朝鮮に於ける某司直官更は飽くまで暴徒の鎮定に努力し之を厳罰に処して、以て国法の威厳を
示すべしと言つて居る。暴動の形に現はれた以上之も必要であらう。

然し之れ丈けで国民は問題の解決に安んずることは出来ない。

斯くの如き事件の後で一方に国法の威厳を示しつつ、他方巨額の御下賜金に
依つて恩威並び行ふの仁恵を示し給ふが我が皇室の有難き慣はしであるから、
今より比事の実現さるべきを密かに期待し奉るも不当ではあるまい。
併し之を以て能事終れりとすべからざるは言ふ迄も無い。我々は更に他の努力を
以て皇室の御趣意を完成するに努めなければならない。


策として民間に日鮮協同の何等かの機関が設立せられんことを希望する。
斯の如きは差当り暴動事件の真相を明かにし、日本の統治に対する忌愕無き批評を聴
き、且つ又誤解を防ぐ為にも必要であるが、殊に将来の解決策を決めるには是非伴之
に依らなければならない。
只問題は今日の場合斯う云ふ機関の設立は望み得るか否かである。

朝鮮在留の米国宣教師の一味である。
又彼等と暴徒との関係に関する風説を将にして反対するものもあらう。

我等は同じく鮮民の開導の為めに努力しつゝある、又努力し
て居るべき筈の彼等と胸襟を披いて此問題を懇談するの雅量なき以上、
到底鮮民の隔意なき諒解を得ることは六つかしい。我々は先づ

此意味に於て善後策の攻究につき外国宣教師の努力を借るは、取も直さず
彼等宣教師を真に日本統治の下に帰属せしむる所以である。