『北ミサイルの本当の実力は』
実際のところ、北朝鮮の戦略兵器の能力はどこまできているのか。
そして今後はどうなるのか。
彼らの戦略兵器についてまず理解しておくべきは、新型ミサイルの開発に注目が集まる一方で、旧式だがまだ使えるミサイルを数多く保有している事実だ。

そうしたミサイルに搭載可能な核弾頭の作り方を彼らがまだ習得していないと判断するのは、あまりにも希望的な観測と言わざるを得ない。
いま彼らが核弾頭を搭載するなら、使うミサイルはおそらく中距離弾道ミサイルのノドンとスカッドERだろう。
ノドンは古いが実績があり、イランなどに輸出されてもいる。
スカッドERの発射実験は昨年が初めてだが、3発同時だった。
今年3月にも4発同時に発射した。
いずれのミサイルも、韓国全域と日本の大部分の地域を射程範囲に収めている。
北朝鮮の保有する核弾頭は20発程度と考えられるが、ミサイルは200発以上あるかもしれない。
もちろん、その200発を一斉に発射できるわけではない。
発射に必要な移動式発射台の保有数は最大で40台とみられる。
ただし、発射台は北朝鮮に無数にあるトンネルや掩蔽壕に隠して、いざというときに引っ張り出してミサイルを発射できるから、事前に探知しにくい。
1991年の湾岸戦争では、イラク軍は米軍の「スカッド狩り」をかわすことができた。
しかしその後、人工衛星やレーダー、ドローンによる偵察能力は著しく向上し、ミサイル発射台を短時間で確実に破壊できるようになった。
北朝鮮もそれは承知している。
だから(車の通れる場所だけでなく)どこにでも隠すことができ、しかも短時間で発射できるようなミサイルを欲しがっている。
つまり彼らは、年代物で制約の多いスカッドやノドンに加えて、より高性能なミサイルの開発を急いでいる。
(ニューズウィーク 2017年04月25日号)より