http://www.cnn.co.jp/m/world/35099970.html

(CNN) 国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)」は18日までに、米軍が先月シリア北部アレッポ近郊でモスク(イスラム教礼拝所)を誤爆し、多数の死傷者が出ていたと断定する新たな報告書を発表した。

報告書によると、アレッポ西郊にあるモスクが先月16日に空爆を受けた。モスクには数百人の信者が集まっていて、少なくとも40人が死亡、数十人が負傷した。

地元住民の話や建物の写真、映像などから、現場は名の通ったモスクだったことがうかがえる。空爆のあった木曜日の日没後は、毎週多くの住民が講話を聞きに集まる時間帯だった。

HRWは、標的の建物について少しでも情報を集めようとすれば、この時間帯に多くの民間人がいたことはすぐに分かったはずだと指摘。米軍が事前の注意を怠ったと批判している。

米軍はこの空爆について、国際テロ組織アルカイダが会合を開いていた建物を狙ったと主張している。だがHRWによると、空爆されたモスクに当時、アルカイダなど武装組織のメンバーがいた形跡はないという。

HRWの幹部は声明で「米軍の攻撃にはいくつかの点で根本的な間違いがあり、数十人の民間人がその犠牲になった」「米当局は何がいけなかったのかを究明し、攻撃を仕掛ける前にやるべきことをやるようにして、再発を確実に防ぐべきだ」と述べた。

米軍は先月、アレッポの南西に位置するイドリブでアルカイダ幹部の会合場所を空爆し、「数人のテロリスト」を殺害したと発表していた。米軍当局者はCNNとのインタビューで、米軍機がモスクから十数メートル離れた建物を空爆したものの、衛星画像によればモスクは倒壊していないと述べた。

これに対してHRWは、空爆があったのはイドリブではなくアレッポ近郊だと指摘し、米軍が場所を取り違えているとの見方を示す。

空爆は在英の非政府組織(NGO)「シリア人権監視団(SOHR)」と、 現地の救助ボランティア組織「シリア民間防衛隊(通称・ホワイトヘルメッツ)」も確認している。空爆の写真や映像を分析した英調査報道サイト「べリングキャット」や、模型で現場を再現した英調査機関「フォレンジック・アーキテクチャー」も、建物はモスクだったと結論付けているという。

HRWによると、現場に残った2つの大きな穴からは、モスクの建物に1発目の爆弾が投下され、外へ逃げ出した信者らに2発目が命中したことがうかがえる。目撃者の話によれば、救助に駆け付けて巻き込まれ、死亡した人もいるという。

報告書は米当局に対し、この空爆に関する調査の結果を公表して犠牲者と遺族に償い、責任者を追及するよう求めている。

2017.04.18 Tue posted at 17:37 JST