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[ロンドン 18日 ロイター BREAKINGVIEWS] - 英国のメイ首相は、自身の政治家としての評価が最も高まっている局面をうまく利用しようとしている。6月8日に総選挙を前倒しで実施することは、英国の指導者として国民からしっかりとお墨付きを得る最適な時期と言える。

早期選挙に踏み切るべき強い理由は3つある。まずメイ氏が率いる保守党は今、下院で野党側をわずかに17議席上回るだけの勢力にとどまっているが、世論調査における支持率は野党より圧倒的に高い。ユーガブの最新調査を見ると、保守党と最大野党・労働党の支持率の差は21%ポイントに開いている。2月の補欠選挙では、政権与党の候補が35年ぶりに勝利した。

総選挙はメイ氏個人の信任投票ともいえる。同氏は昨年6月の国民投票後の政治的な混乱の中で首相の座に就いたが、まだ選挙の洗礼は受けていない。ここで勝利すれば、欧州連合(EU)離脱が現実味を増すとともに、英経済が苦境に陥ったとしても、ある程度政治的立場が守られる。2007年にゴードン・ブラウン氏が首相になった時点ですぐに解散総選挙を決断せず、3年後に辞任に追い込まれたという記憶は、選挙の先延ばしをやめさせる効果的な働きをしている。

また欧州の選挙日程はメイ氏に有利に作用する。今年はフランス、ドイツと国政選挙が続くため、ブレグジット(英国のEU離脱)交渉はどんなに早くてもこの両国で新政権が発足した後になる公算が大きい。そしてもし英国が交渉期限の2019年3月までにEUと何らかの合意ができず、単一市場から退出する事態になっても、メイ氏は2022年までは再び選挙の試練に立ち向わずに済む。

選挙前倒し戦略にはもちろんリスクもある。選挙戦を通じてメイ氏は、これまであいまいにしてきたブレグジットで何を優先するかをはっきりさせなければならない。これは保守党内にくすぶる対立の火種をあおり、親欧州の有権者をライバルの自由民主党支持に向かわせかねない。だが選挙で再び十分な多数議席を獲得すれば、メイ氏は向こう10年首相を続けられる。

メイ氏は18日、選挙前倒しへの反対意見を取り下げたのは「最近」で、なおかつ「気が進まなかった」と打ち明けたものの、「確実性と安定性」を得る唯一の道だとも強調した。より説得力を持つ説明は、メイ氏が遅ればせながらも、自分の政治的資産が今後これほど高くなることは二度とないと気づいたからではないか。

Peter Thal Larsen

2017年 4月 19日 3:15 PM JST