東京大学大学院農学生命科学研究科の村田幸久准教授と中村達朗特任助教らは、免疫に関わる細胞「マスト細胞」から放出される物質が、
短時間で全身に現れるアレルギー反応「アナフィラキシー」を抑える働きを持つことを発見した。

アナフィラキシーを抑える物質の特定は、治療法確立につながる。
成果は27日、米国アレルギー学会誌に掲載された。

アナフィラキシーが起きると全身性のじんましんやかゆみなどの過敏感反応のほか、重症の場合は呼吸困難や血圧低下、失神などのショック症状が現れることもある。
近年食物アレルギーの患者数増加に伴い、生命を脅かすものとして関心が高まっている。

研究グループは、アナフィラキシー反応を起こしたマウスを使い、マスト細胞から産生した物質を調査。
アレルギーを起こすヒスタミンと同時に生理活性物質の「プロスタグランジンD2(PGD2)」が作られていた。

PGD2合成機能や受容体を欠損させたマウスにアナフィラキシー反応を起こすと、症状が悪化した。
さらにPGD2の受容体を薬物によって刺激すると、アナフィラキシー反応は抑えられた。

アナフィラキシー反応は食物アレルギーに限らず、薬物やハチに刺されることで起きる。
PGD2の活用はアナフィラキシー反応に対して効果が期待される。
村田准教授は、「現在の治療法は血圧の変動のリスクがある。PGD2はそうしたリスクも少ないと予想される」と語った。