4月24日夜、神奈川県綾瀬市の東名高速道路上で、成人男性とみられる遺体が見つかった。
車に引きずられたような痕があり、警察がひき逃げ事件として捜査していると報じられた。

報道によると、遺体が見つかったのは、片側4車線ある本線の中央付近。
通りかかった車の運転手から「高速道路上に人が倒れている」との通報があったという。

ドライバーにとって、高速道路の走行路に人がいることは想定されていない。
一般論として、高速道路で人をひいてしまった場合、処罰や損害賠償の程度はどうなるのだろうか。
桑原真理弁護士に聞いた。

●「過失運転致死罪」になるかが争点、不起訴の確率高し

まずは刑事罰から見てみよう。一般に問題になるのは、自動車運転死傷処罰法に定められた「過失運転致死罪」に当たるかどうかだ。
この点について、桑原弁護士は次のように説明する。

「過失運転致死罪が成立するには、ドライバーに前方不注視などの過失(注意義務違反)があることが必要です。
ただし、過失運転致死罪が成立するときでも、検察官が起訴するのは酷だと判断した場合には起訴猶予となります」

桑原弁護士によると、高速道路の場合、ドライバーの過失を問うのは一般道より難しいのではないかとのことだ。
補修工事関係者の立ち入りや、事故後の非常措置などの例外を除き、正当な理由なく高速道路に立ち入ることは「高速自動車国道法」で禁止されているからだ。

「高速道路は人の立ち入りを予定していないため、人の存在や行動の予測が困難な状況もありえます。
また、前方を注視し人に気付いた時すぐに急ブレーキを踏んでも停止距離の関係で回避できないこともありえます。

そのため、一般道に比べてドライバーの『過失』を問えないこともあると考えます。
また、過失運転致死罪が成立する場合でも、本来高速道路への人の立ち入りは禁止されており、被害者の過失が大きいことから、起訴猶予になったり、起訴された場合でも執行猶予になったりすることが多いでしょう。

ただし、高速道路であっても、人をひいたら『救護義務』が発生します。
本件のような、ひき逃げは道路交通法違反となります。過失運転致死罪で起訴するかどうかや、量刑の判断においても不利に働くのではないでしょうか」

●仮にドライバーの過失が認められても、大幅な過失相殺

ここまでは刑事責任の話。民事的にはドライバーの責任はどう考えられるのか。
「ドライバーは自分の無過失を証明できない限り、民事上の損害賠償責任を免れることはできません。
ただし、高速道路を歩いていること自体、歩行者の重大な過失として相当大きな過失相殺がなされます」

ちなみに、基本の過失割合はドライバー20、歩行者80とされているそうだ。
民事の場合でも、ドライバーの責任の割合はかなり小さいと言えそうだ。
なお、履歴書の賞罰欄の「罰」は、確定した有罪判決、すなわち前科のことをいうため、刑事裁判で有罪にならなければ、書く必要はない。

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