安倍政権が掲げる「女性活躍社会」の旗印の下、昨年4月に女性活躍推進法などが施行されたが、それにより、女性優先、女性限定の採用をする政府系機関が続出している。

たとえば国立研究開発法人海洋研究開発機構の公式サイトに掲載されている「採用情報」には、研究者の募集要項として以下のような文言がある。

〈本公募では、男女平等の理念のもと、女性の社会進出を推進するという日本政府の方針に準拠して、多数の女性の積極的な応募を期待するとともに、男性候補者と女性候補者の業績および人物評価が同等であった場合は、女性を優先して採用します〉

何とも奇妙な日本語である。「男女平等の理念のもと」に、男女が同等なら「女性を優先して採用」するというのだから。

調べてみると、他にも独立行政法人など政府系機関の研究職で、「同等なら女性優先」を明記する募集要項が多数見つかった。

JAXA(宇宙航空研究開発機構)は昨年4月、情報セキュリティの招聘職員の募集要項に「人物の評価において、同等と認められた場合には女性を優先します」と掲載。防災科学技術研究所、国立大学法人では名古屋工業大学や山梨大学、公立大学法人の熊本県立大学なども同様に、「同等なら女性優先」とする募集要項を掲げた職種がある。海洋研究開発機構に女性優先採用の理由を尋ねた。

「男女共同参画基本計画で科学技術学術分野においても女性採用の目標割合が盛り込まれていたため、それを達成しなければなりませんから、新規採用の研究者において女性の方を積極的に採用していくポジティブアクション(女性社員の活躍推進)を採らせていただいております。平成27年度採用から実施していますが、今まで男性差別とのご指摘を受けたことはありません」(同機構広報課)

批判の意見を聞いたことがないというが、現実にこの採用HPについて書かれたネット掲示板には、男性からの怨嗟の声が溢れている。

〈大局的に見れば女の社会進出になるかもしれんがそれで落とされる個々の男性研究者の人権はどうなるんや〉
〈何で機会じゃなくて結果を優先するんすかね〉

※週刊ポスト2017年5月26日号
http://www.news-postseven.com/archives/20170518_550768.html