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(リンク先に動画あり)

中東で広く演奏されている伝統楽器「ウード」は、世界最古の弦楽器とも言われています。この「ウード」を古くから作り続けているのがシリアです。内戦が続く中、隣国レバノンに避難しながらウードを作り続ける職人がいます。

去年11月、シリアの首都ダマスカス郊外からレバノンの首都ベイルートに避難してきたバシャール・ハラビィさん(58)。ダマスカス郊外にあった工房は内戦に巻き込まれ破壊されましたが、工具と材料をかき集めて、レバノンで「ウード」の工房を再開しました。

バシャールさんの工房には、シリアから逃れた音楽家が自然と集まるようになりました。激戦地・アレッポ出身の音楽家ムハンマドさんもその1人。内戦の前は、地元の結婚式などに呼ばれて演奏していました。ムハンマドさんがいつも演奏するのが、地元アレッポで愛されていた曲です。

ムハンマドさんは、バシャールさんのウードについて、「とても懐かしいきれいな響きです。こんな音色を作り出せるのはバシャールさんだけです」と話しています。

「ウード」はレモンやクルミの木で作られていますが、バシャールさんは、独特の深い響きを出すには、よく乾燥した木材が必要だと考えています。しかし、避難先のレバノンは、乾燥した気候のシリアとは環境が違い、楽器作りに向く乾燥した木材がなかなか見つかりません。シリアから持ち込んだ木材が残りわずかとなっており、バシャールさんは、一枚も無駄にしないように慎重に制作に取り組んでいます。

バシャールさんはウード作りのほか、シリアから逃れてきた若者たちとも交流を深めています。自分が作った「ウード」に触れてもらうことで、祖国への思いを分かち合う場を持ちたいと考えたからです。

バシャールさんは「戦争は必ず終わります。そうなったらシリアに戻って工房を再開するつもりです。命あるかぎりウードを作り続けます」と話し、シリア内戦の先行きが見えないなか、「ウード」を守り続ける覚悟を固めています。

5月20日 7時00分