http://www.niigata-nippo.co.jp/news/national/20170522325282.html

 出雲崎町下小竹集落の観音堂に安置されていた33体の観音像のうち、1体の行方が分からなくなった。江戸時代に「西国三十三所」の観音像になぞらえて作られたと伝わり、住民が大切に守ってきた。住民は何者かに盗まれたとみて与板署に盗難届を提出。「地元を長年見守ってくれた宝物で、観音様も悲しんでいる。どうか返してほしい」と訴えている。

 住民らによると、観音堂の管理人が3月に参拝した際になくなっているのに気付いた。堂内では観音像が3段に並べられており、下段の右端にあった1体が消えていた。

 観音像は、江戸時代後期の禅僧で出雲崎出身の光禅庵主(こうぜんあんしゅ)が、京都の清水寺など「西国三十三所」の観音像に似せて作るよう信者に求めたものだという。西国の名高い寺の御利益を、遠く離れた出雲崎でも得られるようにしたと伝わる。

 なくなった像は、高さ約40センチ、重さ約3キロ。観音堂はこれまで住民が自由に参拝できたが、像が消えた後は施錠するようになった。住民は「なぜ1体だけなくなるのか」と首をひねる。

 観音像は県や町の文化財の指定は受けていないが、住民は年に1回程度の法要を営み、普段から花を供えるなど、長年守り続けてきた。それだけに地元のショックは大きく、集落総代の重住英夫さん(73)は「みんなで大切にしてきた観音様。とがめたりはしないから、そっと返してもらえればそれでいい」と訴え、見つかることを切望している。