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「ヘルスケア大学」の記事に間違いが多数含まれているとの指摘があり、運営元が改善策を発表。記事は編集部と社内外のライターで執筆し、医師が監修しているという。

[岡田有花,ITmedia]2017年05月25日 17時29分 更新


 医師による監修を売りにする医療・健康情報サイト「ヘルスケア大学」の記事に、間違いが多数含まれているとの指摘を受け、運営元のリッチメディアがこのほど、改善策を発表した。ITmedia NEWSの取材に対して同社は、「間違いが含まれる記事は少ないと認識している」と話しており、記事の執筆体制などを明らかにした。

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ヘルスケア大学トップページより

「医師が監修」も……誤り指摘

 ヘルスケア大学は、病気の治療法や体調不良の対処法など、医療・ヘルスケア関連の記事を多数掲載しているサイト。ディー・エヌ・エー(DeNA)の医療サイト「WELQ」が閉鎖されて以降、注目が高まっている。

 リッチメディアによると、掲載記事数は「数万」にのぼり、全記事を医師が監修しているとアピール。5000人以上のドクターが参画していると説明している。

 ただ、「内容に間違いや不正確な点がある」との指摘も以前からあり、医師の桑満おさむさんは5月20日付けのブログで、膀胱炎に関する記事の誤りを多数指摘していた。

 同社によると、25日までに外部から間違いを具体的に指摘されるなどして修正を検討している記事は19本あり、うち17本は非公開にしたという。ほかにも、誤りがある可能性がある記事は「一定数認識している」が、「記事全体に占める割合は少ない」と考えているという。外部から指摘を受けていない記事も、再度内容を精査するとしている。

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編集部と社内外のライターで執筆、医師が“赤入れ”

 ヘルスケア大学の記事は、誰がどのように執筆しているのか。同社によると、(1)編集部で、読者の関心に沿ったテーマの記事案を作る、(2)医学的根拠となる資料を集める、(3)社外のライター(クラウドソーシングのライター含む)に執筆依頼する、(4)ライターが執筆した原稿を社内で確認する、(5)医師に監修を依頼する、(6)医師が赤入れした情報を記事に反映する、(7)再度社内で確認する、(8)公開する――という流れで制作。同社には、「医療分野の出版やメディアに携わったことのある編集者・ライターが複数いる」という。

 医師の監修を経ているにも関わらず、誤りのある記事が掲載されていた理由は、(1)記事によって担当編集者が異なり、横断的な品質管理ができていなかった、(2)基準に満たない情報をエビデンスとして採用してしまった、(3)監修者が各記事につき医師1人だったことで、視点の偏りが生じてしまった――ことだと同社は分析する。

 現在は「編集長」を設置し、品質のムラを解消するなどチェック体制を強化しているほか、今後は、複数人の医師や専門家の意見を反映した監修・改訂を繰り返したり、有識者による「メディア・コンプライアンス委員会」を設立するなどして信頼性を向上させていく計画。記事の誤りを見つけた人が同社に連絡しやすいよう仕組みづくりも行うとしている。

「致命的な間違いはない」が……

 ヘルスケア大学の記事は「信頼できる」だろうか。嬉野が丘サマリヤ人病院(沖縄県南風原町)の医師・高木俊輔さん(精神科)は、「ランキング上位の記事をいくつか見た限りでは、致命的な間違いは発見できなかった」と話す。

 桑満さんがブログで指摘するように「医学的・解剖学的な間違いは散見される」(高木さん)が、その間違いは「患者さんの受診行動や受療行動に影響を与えるほどの致命的なものではないように思えた」という。ただ「医療者監修をうたうのであれば、そこもさらに正確であるべきとも思う」とも。

 各記事には「突っ込まれやすそうな細かい数字や質的な重み付けなどはあまりないようだ」とみており、「何かを強く勧めたり、不安をあおったりする記事も、読んだ限りではなかった」という。それだけに「このサイトを見てもどういう受診行動を取っていいかははっきりしないかもしれない」とも指摘する。

 「病気については、個々の患者さんによって症状の現れ方や経過は大きく異なるので、記事を鵜呑みにせず、専門家の意見をよく聞いてほしい」と高木さんは話している。

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