銃弾をも砕くガラス「ルパートの滴」。ようやく仕組みを解明
名前からして強そう。

溶けたガラスを水に垂らしたとき、いったい何が起こると思いますか? ガラスが水に触れて冷やされることで、オタマジャクシのような透明の物体ができるのです。そして、一端は防弾ガラスのように強靭なのですが、もう一端はとてももろいのです。
このガラス自体は400年前から作られていたのですが、最近になってその不思議な構造の仕組みが判明しました。


このガラスはドイツのルパート公にちなんで「ルパートの滴(別名:オランダの涙)」と呼ばれています。SmarterEveryDayのDestin Sandlin氏がYouTubeに投稿した動画では、このルパートの滴の分厚い一端を狙って22口径の銃弾を撃ちます。
そして銃弾がガラスと衝突した瞬間に、見事に銃弾が砕け散っているところを動画(https://youtu.be/F3FkAUbetWU)で見られます。

ルパートの滴の作り方は至ってシンプル。ソーダ石灰ガラスや鉛ガラスのように高い熱膨張係数を持つガラスを冷たい水に垂らして、急激に冷すだけ…でも、その2つの要素こそが大事なんです。
この滴が急速に冷えることによって外側が内側より速く冷却され、外側の層に極端な圧力がかかり、逆に内側には強く引力が働きます。これらの力によって、ルパートの滴の一端に驚くべきほど強い硬さが生まれるのです。
通常内向きの張力はガラスをもろくしますが、外側に対抗する圧力がかかっているため、銃弾で打たれても壊れないような強いガラスになります。

科学ジャーナルApplied Physics Lettersに投稿された論文によると、パデュー大学の研究チームは偏光フィルターを使って、ルパートの滴内部の圧力のかかり方を視覚的にわかるよう画像にしました。
そして研究者たちは、複雑な数学の技術を使って写真を処理し、滴内部の圧力を計算しました。6.4平方センチ(1平方インチ)あたり50トンもの圧力がかかっているため、滴の頭の部分だけではありますが、鉄と同じくらいの強度があったのです。

ルパートの滴のもう一端は、薄くて長い尻尾のようになっていて、頭の部分と比べるととてももろい構造になっています。1994年に行なわれた研究で、ルパートの滴を折ると、時速6,437kmの速さでガラス全体に亀裂が入り砕け散るということは明かされていました。

これらの研究は、将来的にスマートフォンやタブレットの液晶ガラスへの応用が期待されています。もし、ルパートの滴のような液晶ガラスができたら、落としても割れないどころか、銃弾をはじくことができるようになるかもしれません。今後の発展に期待したいですね。

top image: SmarterEveryDay/YouTube
source: Purdue University via New Atlas, YouTube 1, 2
Andrew Liszewski - Gizmodo US[原文]

https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170526-00010011-giz-prod