政府が各自治体に設置を促しているワンストップ型の性暴力被害者の相談窓口で、4月時点で24時間化を実施しているのは全国39カ所のうち11カ所の3割程度にとどまっていることが、毎日新聞の取材で分かった。
24時間化した窓口では相談件数が急増しており、専門家は未実施の自治体でも検討を急ぐよう求めている。

ワンストップ型の相談窓口は、性暴力の被害相談に対して医療、心のケア、法的支援などを一つの窓口で総合的に支援するもの。
政府は、自治体が設置に関与する公的な被害者支援機関を2020年までに各都道府県で最低1カ所設けられるよう呼びかけている。

毎日新聞が全都道府県などに取材したところ、自治体が関与する窓口は4月時点で38都道府県39カ所あり、うち24時間相談を受け付けているのは11カ所だった。
九州・山口・沖縄の9県で24時間化しているのは福岡と熊本両県の2カ所のみで、山口県は今年度中に実施する方針という。

福岡県の「性暴力被害者支援センター・ふくおか」は15年12月から受付時間を15時間から24時間に拡大。
その後の1年間で1237件の相談があり、24時間化前の前年同期(705件)より約1・8倍に増えた。かつて相談を受けていない深夜などに「死にたくなって、話す相手がおらずにかけた」と初めて相談が寄せられたケースもあったという。

センターは24時間化にあたり、約20人だった相談員をほぼ倍に増員。県もセンターの運営などにあてる予算を約1525万円(14年度)から約3312万円(16年度)に倍増させて運営を支援する。

熊本県は15年6月、「くまもと被害者支援センター」で受けていた性被害相談を独立させて「ゆあさいどくまもと」を設立し、24時間化した。
昨年5月までの24時間化後の相談件数は1年間で795件で、前年同期の5・3倍に達した。県はゆあさいど設立のために15年度、約1700万円を支出して相談員30人を確保した。

24時間化に踏み切れない鹿児島県の担当者は「相談員の確保が難しく費用もかさむ」と漏らし、厳しい地方財政が浮かぶ。
また、長崎県の窓口の担当者は「専門技術を身につけた相談員の養成が必要だ」などと人員面での課題も指摘する。

精神科医で犯罪被害者支援にも携わる小西聖子・武蔵野大教授は「性暴力は夜間に発生する傾向があり、真夜中は悪夢や記憶がよみがえることが多い。
こうした時間帯に電話相談できると、被害者が救われる可能性が高まる。
適切な対応が、うつ病や自殺の減少につながる点を考慮して、行政は公的支援に本腰を入れて24時間化を図るべきだ」と話した。【菅野蘭】

■公的支援の拡充を

ワンストップ型の相談窓口の24時間化には財源確保が欠かせないが、自治体が設置に関与しているにもかかわらず、運営費の財政支援を受けていない窓口が4月時点で6カ所あったことも分かった。
運営費の財政支援を受けていない窓口は、病院が事業として開設したり、民間団体が寄付金や募金などを活用して運営したりしていた。

国は今年度から各地の窓口支援に充てるため約1億6000万円の予算を計上した。

賛助会員の会費などで運営している埼玉県の窓口担当者は「夜間まで相談の時間帯を延長したいがマンパワーが足りない。
公費投入があればより一層の被害者支援の充実が図れる」と公的支援の拡充を求めている。【菅野蘭】

配信 2017年5月28日 06時50分
毎日新聞
https://mainichi.jp/articles/20170528/k00/00m/040/153000c