http://techon.nikkeibp.co.jp/atcl/event/15/052400124/060600019/?i_cid=nbptec_sied_toppickup

COMPUTEX TAIPEI 2017

GIGABYTE、AI研究に向け沸騰サーバー展示
小型サーバーも液浸冷却の時代へ
宇野 麻由子 2017/06/07 07:51 1/1ページ
 マザーボードやグラフィックカードのメーカーである台湾GIGABYTE TECHNOLOGY社は、「COMPUTEX TAIPEI 2017」(2017年5月30日〜6月3日、台北市)で小型の液浸冷却式サーバーの試作機を展示した。液浸冷却とは、基板ごと冷却用の液体に沈めておき、マイクロプロセッサーなど発熱部品部分で液体を沸騰させ、その気化熱で冷却する方式。併用するファンの性能を下げたり省いたりすることができるので、サーバー全体の小型化や静音化が図りやすいという。
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GIGABYTE TECHNOLOGY社が展示した今回の試作機は、いわば一般的なサーバーを冷却液にジャブ浸けしただけとのこと。メイン基板からヒートシンクやファンなどを除去した程度で、ほとんど最適化を図っていないという。一般的な空冷・液冷のサーバーに比べると、ファンや冷却用構造の引き回しを簡素化できるという。


今回展示した試作機の外形寸法は1.3m×0.7m×1.0mで、6000Wまで冷却可能。生じる気体は上部の冷却器で冷却され、再度液化して下に落ち、また冷却に使われる。冷却器部分はファンで冷却するが、空冷方式や冷却液を循環させる液冷方式に比べて、低い性能のファンでも冷却できるので、ファンを省いたり回転数を落としたりできる。
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マイクロプロセッサーの部分から泡が出て沸騰しているのが分かる。気化して生じるガスは自然と上部へ抜け、上部の冷却器で冷やされてまた下部に落ちるので、特に循環用のポンプを設けたりする必要もない。上部の冷却器の冷却にファンは使うが、直接各マイクロプロセッサー上に取り付ける場合に比べると数を減らせるという。

冷却に使用する液体は米3M社のフッ素系液体「Novec」。この液体は人体に影響なく、非導電性、沸点が低く蒸発しやすいのでメンテナンスのために基板を取り出したとしても瞬時に乾くという特徴を持つ。蒸気も不燃性のため、スパークによる火事も抑えられる。この液体自体は以前からあるもので、新幹線の整流器などにも使われているという。今回、サーバーの冷却に使うため、最適な沸点(56℃)になるよう調整したとする。

 同社は、液浸方式を採用する大型のデータセンターを構築した経験を持つ。冷却システムメーカーの香港Allied Control社と開発した、ブロックチェーン技術のBitFury社が運営するジョージア(グルジア)のデータセンターだ。データセンターの場合は基板間隔が2〜3mmと非常に狭いため、液体が回り込み気化したガスがうまく抜けるよう、構造などを工夫したという。

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ここ1〜2年、活発化している人工知能(AI)や深層学習(ディープラーニング)の研究では、高密度実装で電力密度の高い小型のサーバーが研究室などに設置するケースが多い。同社では、ごく小型のサーバーについて冷却性能の向上や小型・静音化といった需要が高まるとみて、今回の展示を行ったという。Allied Control社も同様の展示を行っていた。
なお、同様の液浸冷却の展示は富士通がプライベートイベント「富士通フォーラム2017 東京」で展示した(関連記事)ほか、「CES 2017」でもあった。

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