http://itpro.nikkeibp.co.jp/atcl/idg/14/481542/070500390/

2017/07/05 Peter Sayer IDG News Service
 量子コンピューティングの主要な構成要素を、独自のフォトニクスチップと通信機器用の既製部品を使って実現する新たな手法を、カナダの研究チームが考案した。


Credit: IBM Research
 この研究チームが開発したフォトニクスチップは、複数の色を重ね合わせた量子もつれ状態の光子のペアを生成できる。このペアは、2つの「qudit」(量子計算の情報の単位)として操作でき、それぞれが10個の値を取ることができる。

 古典コンピュータは複数の値に対して順番に操作を行う。一方、量子コンピュータは、変数が取り得るすべての値を同時に表すことができ、計算の最後で「正解」に収束する。コンピューティングのすべての問題にこの手法が役立つわけではないが、さまざまな形式の暗号化を解読する際に必要となる、大きな数の因数分解では特に有効だ。

 量子コンピュータの基盤として値を保持する要素は、本質的に不安定で、連携して機能させるためには、もつれ(エンタングルメント)というプロセスで結び付ける必要がある。計算を実行する間、すべてをもつれ状態に維持して機能させるのは、要素の数が増えるほど難しくなる。

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 量子計算の要素のうちで最も基本的なのは、2次元の量子ビットで、2個の値(0と1)を同時に取ることができる。6量子ビットの量子コンピューターであれば、64個(2の6乗)の値すべてを取れる。だがそれには、6つの要素の量子状態を維持する必要がある。

 2016年7月に、ロシアの研究チームが、量子ビットを使って量子コンピュータを開発するよりも、もっと少ない数のquditを維持する方が簡単だとする発表を行った。quditは、それぞれが量子ビットより多くの値を取ることができる。この研究チームは、5次元のquditを生成する方法を示した。これを使うと、2量子ビットの量子コンピューターを上回るコンピューティング能力を実現できる。

 今回カナダの研究チームが発表したフォトニクスチップでは、10次元のquditのペアを量子もつれ状態で生成できる。6量子ビットの量子コンピュータよりも多数の値を保持できるが、状態を維持するのは2つの要素だけで済む。

 このチップでは、9000以上の値を持つ量子もつれ状態のquditのペアを生成することも可能なはずだと研究チームは説明する。これは12量子ビットのコンピュータに相当する。

(中略)

(了)

翻訳:内山卓則=ニューズフロント
記事原文(英語)はこちら http://www.itworld.com/article/3205451/high-performance-computing/less-is-more-for-canadian-quantum-computing-researchers.html