経営者の損害賠償責任が生じた場合に備えて加入する役員賠償責任(D&O)保険の補償額が、平均で約5億円にとどまっていることが11日、分かった。100億円を超えるのが一般的な米国の20分の1程度で、専門家も「補償額としては心もとない」と話している。

 D&O保険の状況は、東京海上日動火災保険が今年3月にインターネットを通じて実施したアンケートで判明。事前調査で、D&O保険に加入していると回答した449社を分析した。

 アンケートによると、1年以内に加入した企業は9・8%。3年以内まで含めると27・4%を占めており、近年、契約が増加していることがうかがえる結果となった。

 ただ、保険の補償額は1億円未満が最多で9・1%。20億円以上と回答した企業も3・1%あったが、全社を平均すると約5億円だった。3千人以上の大企業でも補償額の平均は約9・5億円だった。

 東京海上によると、米国では100億円を超える補償が一般的といい、担当者は「日本ではコーポレートガバナンス(企業統治)や役員責任に関する認識が海外ほど浸透していないため」と分析する。

 経済産業省も平成27年、「訴訟リスクに対応するD&O保険のさらなる活用が必要」などとする報告書をまとめている。

 実際に多額の損害賠償請求が経営者個人に対して行われるケースは、国内でも発生。今年4月にはオリンパスの損失隠し事件をめぐる損害賠償訴訟で、東京地裁が旧経営陣に対し総額約590億円を同社に支払うよう命じる判決を出した。

 D&O保険の補償額に関する調査はほとんどなく、各企業が経営者に対してどの程度の保険をかけているかは、これまでよく分かっていなかったという。

http://www.sankei.com/smp/economy/news/170712/ecn1707120004-s1.html
経営陣が損害賠償の対象になったケース
http://www.sankei.com/images/news/170712/ecn1707120004-p1.jpg