「君が欲しい!」とプロポーズしたり、漫画風の描写で旧来の公務員像を風刺したり。自治体の職員募集ポスターがユニークさを競っている。
好景気で公務員人気に陰りが見える中、各自治体は個性を打ち出して受験者を呼び込もうと躍起になっている。求める人物像の変化も反映しているようだ。(広岡磨璃)

膝を突き、プロポーズの姿勢を取る男性。差し出すのは指輪を模した市章だ。「加古川市は君が欲しい!」とうたう兵庫県加古川市の職員募集ポスター。
人事課の前川有紀さんは「本年度はインパクト重視にした」と話す。就職活動の売り手市場に対応し、2010年度からポスターを作製。

13年度から若手中心の採用プロジェクトチームを設け、ポスター考案も担う。今年は300枚を刷り地元のほか、全国の大学にも送り、阪急河原町駅(京都市)など学生の多い駅にも掲示を依頼した。

明石市の魚の棚商店街を背景に、サングラス姿の男女が疾走する。同市のポスターは、逃走者が鬼役の「ハンター」から逃げ回る人気テレビ番組「逃走中」をイメージ。
「旬なあなたにロックオン!」や人気ゲーム「ポケモンGO(ゴー)」にちなんで「マルチな若者(ワカモン)、ゲットだぜ!」など、キャッチコピーにも工夫を凝らす。
担当者は「応募者に求める『イキのよさ』や『熱さ』を、ポスターの図柄やコピーに反映させてきた」と話す。

「5、6年ほど前から、個性的なポスターが増えてきた。公務員の堅いイメージを覆す狙いと、自治体間競争が激しくなってきたことの表れでは」とみるのは姫路市人事課。
同市も16年度、軍師官兵衛に扮(ふん)する若手職員と共に姫路城をPRした。本年度から作製を始めた高砂市は若手を広い道路に並べて立たせ、スタイリッシュに決めた。

「若手職員を起用したポスター、増えましたよね」と先達の自負をのぞかせるのは奈良県生駒市。3年前、「ジャニーズを意識した」というポスターがネットで話題を呼んだ。
本年度は旧来の公務員像を逆手に取る。「#単純作業アモーレ(愛)」など、「お役所仕事」を若者らしい言葉遣いで皮肉った後、「その公務員のイメージ、3分で覆します」「#生駒は違う」と呼び掛ける。
効果について「毎年千人以上の受験者を確保できているのはPRも一因」とする。

歴代のポスターが人気なのが大阪府警。泣きじゃくる男の子の姿に手書きの文字を重ねて「ごめんですんだら警察いらんわ!!」(11年度)など、秀逸なコピーが話題に。
柔道着姿の男性の割れた腹筋を背景に「草食系より大阪府警」(14年度)も話題となったが、「求める人物像が体育会系一辺倒ではなく多様化している。ポスターも少しずつ変化している」という。

プロポーズを模した加古川市の職員募集ポスター
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201707/img/b_10363781.jpg
明石市の本年度のポスター
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201707/img/b_10363782.jpg
大阪府警の2011年度のポスター
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201707/img/b_10363779.jpg
姫路市の2016年度のポスター
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201707/img/b_10363783.jpg
奈良県生駒市の本年度のポスター
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201707/img/b_10363780.jpg

■試験倍率下落に危機感

各自治体に共通するのは、優秀な人材確保への危機感だ。総務省の調べでは、地方公共団体の採用試験倍率は2010年度の9・2倍から5年連続で下落し、15年度は6・6倍だった。
PR強化へ、フェイスブックやLINE(ライン)など会員制交流サイト(SNS)を活用する自治体も増加。就職活動前の大学1回生など向けに説明会を開いたり、就職・転職サイトを活用したりする市も多い。

神戸学院大現代社会学部の中野雅至教授(行政学)は「ポスターは横並び感があり、波及効果にも限界がある。SNSは学生も活用しており、より効果的ではないか」と指摘する。
求める人物像が民間と変わらなくなり、より門戸を広げるため、各自治体は試験方法にも知恵を絞る。専門試験に代わり、SPI(総合適性検査)を導入する動きが目立つ。 ※続く

配信 2017/7/12 15:30
神戸新聞NEXT 全文はソース先で
https://www.kobe-np.co.jp/news/shakai/201707/0010363778.shtml