インターネットショッピングで代金を振り込んだのに、品物が届かない「ネットショッピング詐欺」。近年、増加しており、
愛知県警サイバー犯罪対策課が犯行手口を分析した結果、悪用された振込先口座の半数以上が、ベトナム人や中国人名義だったことが分かった。

技能実習生や留学生が帰国間際に口座を売却することがあるという。県警は詐欺の基盤として悪用される「犯罪インフラ」になっているとみて、取り締まりや注意喚起に力を入れている。

◆「売却は違法」愛知県警啓発

「口座を売ると逮捕されてしまいます」「帰国する前などに口座を売るのは絶対にやめて」

今月五日、愛知県犬山市の日本語学校「名古屋教育学院」であった県警による講話で、サイバー犯罪対策課の足立達信警部がベトナム人留学生ら数十人に、身ぶり手ぶりを交えて呼び掛けた。
寸劇や手作りしたイラストを使い、口座や在留カード売却の違法性を訴えると、留学生らは神妙に聞き入った。
学院の林翰波(かんぱ)学院長(45)は「残念ながら口座を売ってしまう人は実際にいる。われわれも呼び掛けているが、県警からの啓発は非常にありがたい」と話す。

同課は、今年一〜六月末に受理したネットショッピング詐欺被害に関する振込先口座を調査。口座名義人の氏名から国籍を推定したところ、日本人名が44%、次いでベトナム人が37%、中国人が19%で、ベトナムと中国を合わせると半数を超えた。

ネットショッピング詐欺は、実在する企業のサイトを模した「偽サイト」や、そもそも詐欺を目的につくった「詐欺サイト」を通じて被害に遭うケースがほとんど。
代金の振込先が企業名ではなく、中国人やベトナム人など外国人の個人名の場合には注意が必要という。

昨年、県警に寄せられたサイバー犯罪相談受理件数は過去最多の六千八百五十五件(前年比八百二十一件増)。そのうち、ネットショッピング詐欺などは、全体の六割にあたる四千四十八件(前年比六百八十二件増)に上った。
一件あたりの振込金額は数千円から三十万円余。少額被害の場合は通報しない人もいるとみられ「受理件数は氷山の一角」(県警幹部)との声もある。

サイバー犯罪対策課の小竹一則次長は「ウイルス対策ソフトが危険サイトをブロックしてくれることがある。安全に利用するために自衛策を講じてほしい」と呼び掛けている。

◆帰国前勧誘「買います」

インターネットバンキングから何者かに金を抜き取られる手口の「不正送金事件」でも、ベトナム人や中国人の個人名義の口座が送金先の口座として悪用されている実態がある。
愛知県警サイバー犯罪対策課の分析によると、今年一〜六月末、不正送金被害で送金先として悪用された二十三口座のうち、口座名義人がベトナム名だったのが十六口座、中国名は二口座で、主に外国人口座が使われていた。

名古屋・中川署とサイバー犯罪対策課が十一日、銀行通帳を譲り渡したとして犯罪収益移転防止法違反容疑で逮捕した二人の女も、ベトナム国籍の技能実習生だった。
二人は共謀し、ゆうちょ銀行に開設された容疑者名義の貯金口座の通帳とキャッシュカードを譲り渡したとされる。

会員制交流サイト(SNS)や中国語版チャット、ベトナム人のフェイスブックなどを通じて「口座買います」という広告が出ており、それらを見た技能実習生や留学生が帰国間際に口座を売るケースがあるとみられる。(梅田歳晴)

サイバー犯罪の相談状況
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配信 2017年7月16日 朝刊
中日新聞
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