ヤマト運輸の配達時間帯指定枠の見直し
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 ◇荷物量が減らず 「お中元シーズン…昼休み取れていない」

 宅配最大手、ヤマト運輸が配達指定の時間帯を見直して1カ月あまりが過ぎた。宅配ドライバーの負担軽減が目的だが、現場のドライバーからは「状況は変わっていない」との声も出ており、待遇改善には時間がかかりそうだ。一方、宅配業界の人手不足などを受け、大手スーパーなどでは物流効率化に向けた独自の試みも始まっている。

 「お中元シーズンで荷物量が増えていることもあり、配達時間を見直しても昼休みは取れていない」。関東地方で勤務するヤマトの40代男性社員は、
 そう話す。ヤマトは、再配達の増加などで負担が増えるドライバーの昼食時間を確保しようと、6月19日から「正午〜午後2時」の時間指定の配達を廃止した。また、「午後8〜9時」の最も遅い指定区分も「午後7〜9時」の2時間に拡大し、最後の1時間に配達指定が集中するのを緩和した。

 しかし、荷物量が減っていないため、廃止された「正午〜午後2時」の時間帯には「時間指定の無い荷物をより多く配るようになり、状況は変わっていない」(西日本の20代男性ドライバー)のが実情だ。

 ヤマトは、約230億円の未払い残業代の支払いを7月中旬から開始。出退勤の時間厳守を進めており、各営業所ではタイムカードの記録管理を徹底し始めた。また、休憩時間に働いた場合や残業については、「申告した分は支払われるようになった」(40代社員)という。

 ヤマトホールディングス(HD)は、「すぐに状況が変わるわけではない。これから見直しの効果が出るように取り組んでいく」(広報)と話す。ヤマトは、今年度はグループの従業員数を前年度比で約9200人増やすほか、大口顧客に値上げを要請し取扱個数を8000万個減らす計画で、インターネット通販大手アマゾンなど大口顧客との交渉を本格化させている。【中島和哉、松本尚也】

 ◇小売り各社、独自に配送の効率化に乗り出す

 宅配業界の人手不足を受け、スーパーやネット通販などの小売り各社は、独自に配送の効率化に乗り出している。

 イオンは7月24日から、サッポロHDと貨物船の定期便を共同利用した海上輸送を始めた。静岡・清水港から大分・大分港の航路で、イオンが九州で製造した自社開発商品を運び、サッポロが静岡県で製造した清涼飲料を運ぶ。

 千葉、東京、埼玉で展開するコープみらいは6月から、都内と千葉県の一部で午前5〜7時に商品を届けるサービスを試験的に始めた。玄関先に置く届け方で、起床した利用者が取り込む。夕方から夜に集中する宅配を早朝に分散させ、渋滞の少ない時間帯を使い効率的に配送するのが狙いだ。

 事務用品通販会社のアスクルは、セブン&アイHDと7月に業務提携。セブンの生鮮食品をアスクルが配達し、共同で物流の効率化を図る。アスクルは「今後も最小限の人数で最大限のサービスを実現していきたい」と話している。【竹地広憲、今村茜】

 ◇「宅配業界の人手不足」

 アマゾンなどインターネット通販の普及で引き受け荷物は急増しており、ヤマト運輸では2016年度の取引荷物量が前年度比7.9%増の約18億7000万個と過去最高を更新。ドライバーらの人手不足も深刻となって、現場は荷物がさばききれず、従業員の長時間労働が常態化した。

 そのため、ヤマトは4月、配達時間帯指定枠見直し▽基本運賃の引き上げ▽宅急便の総量抑制−−といった対策を発表。他の宅配各社も、正社員の一部ドライバーへの週休3日制の導入や、希望した日時に駅や商業施設で荷物を受け取れる「宅配ロッカー」増設によるドライバーの再配達件数削減など、人材確保や労働環境の改善を進めようとしている。

配信 7/27(木) 19:13配信
毎日新聞
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