国籍法は、重国籍者に22歳までの国籍選択義務を課しており、この義務を果たすためには外国籍の離脱(14条2項前段)または日本国籍の選択宣言(14条2項後段)のいずれかによらなければならない。具体的には、外国で国籍離脱の手続きをとった場合は、それを証明する書面を添付して外国国籍喪失届(戸籍法106条)を出し、外国籍の離脱の手続きをとっていない場合は日本国籍選択・外国籍放棄の宣言届(戸籍法104条の2)を出すことになる。いずれも届出がなされた場合は戸籍に記載される。
国籍選択宣言をすれば、国籍法上の義務は果たしたことになるが、残された外国籍の離脱にも努めなければならないとされている。ただ、国籍離脱が容易に認められない国もあることから、この手続きは努力規定にとどまっている。
国籍法は、法務大臣は国籍選択をしていない者に対して催告を行うことができ、催告から1ヶ月以内に国籍選択をしなければ日本国籍を失うとの規定もある(15条)。しかし、実際に法務大臣がこの催告を行った例はないとされている。また、国籍法上、国籍選択の義務を果たさなかった場合の罰則規定もない(関連記事=「蓮舫氏告発」 時効成立の疑い 大々的に報じた産経新聞の責任)。
蓮舫氏は、「二重国籍」疑惑が生じた昨年9月当初、17歳で日本国籍を取得した際にあわせて外国籍放棄の宣言もしたと説明していたが(産経新聞への回答)、実際は国籍選択・外国籍放棄の宣言届出をしておらず、昨年10月7日に届け出をしていたことが明らかになった。
朝日新聞社広報部は、当機構の質問に対し「記事は国籍法について、重国籍を持つ人がとりもなおさず日本国籍を失ってしまうという不安を抱かないよう運用面を含めて大枠を解説する趣旨でこのような記述をしましたが、条文を説明するところで『努力規定』としたのは不適切でした」と回答した。
重国籍、なにが問題?解消手続きは? 民進・蓮舫代表、戸籍情報開示
 民進党の蓮舫代表が戸籍情報を開示した重国籍問題。日本政府は重国籍を認めていないが、国際化の進展で珍しいことではなくなった。何が問題で、手続きはどうなっているのか。
 父母のどちらかが外国人である場合や、米国など出生地によって、ほぼ自動的に外国籍が与えられるケースがある。法務省は正確な人数を把握していないが、改正国籍法が施行された1985〜2014年度に生まれた日本国籍のある人のうち、二重国籍を持つ可能性がある人は約83万人いたとされる。
 日本の国籍法は、努力規定として、22歳までにいずれかの国籍を選択するよう求める。解消には、(1)外国籍を離脱する(2)日本国籍選択と外国籍放棄の宣言をする――ことが必要だ。蓮舫氏は49歳だった昨年、日本国籍の選択を宣言。金田勝年法相は22歳以降について「国籍法上の義務に違反していた」と述べた。…(以下、略)…

朝日新聞2017年7月19日付朝刊
国籍法
(国籍の選択)
第十四条 外国の国籍を有する日本国民は、外国及び日本の国籍を有することとなつた時が二十歳に達する以前であるときは二十二歳に達するまでに、その時が二十歳に達した後であるときはその時から二年以内に、いずれかの国籍を選択しなければならない。
2 日本の国籍の選択は、外国の国籍を離脱することによるほかは、戸籍法の定めるところにより、日本の国籍を選択し、かつ、外国の国籍を放棄する旨の宣言(以下「選択の宣言」という。)をすることによつてする。

第十六条 選択の宣言をした日本国民は、外国の国籍の離脱に努めなければならない。
* 国籍の選択について (法務省)

朝日新聞2017年7月24日付朝刊34面
* (初稿:2017年7月27日 11:57)