■身近な犯罪、誰もが当事者に

スマートフォンの利用が普及する中、スマホを見ながら歩いている人を目がけて体当たりする暴力行為や、故意にぶつかって自分のスマホを落として修理代を請求する「スマホ当たり屋」と呼ばれる新手の犯罪が全国で相次いでいる。
捜査関係者によると、東京都内でも昨年以降、当たり屋被害が連続して発生しているという。
誰もが当事者となりうる身近な犯罪で、警察当局も警戒を強めている。

7月19日、神戸市中央区のJR三ノ宮駅のホームで、スマホを見ながら歩いていた50代の女性が体当たりされ、転倒する事件があった。
女性は後頭部を強く打ち、頭の骨を折る重傷。

その後、傷害容疑で兵庫県警に逮捕された60代の男は「女性が前を見ていなかったからぶつかった。
相手が悪い」などと供述した。
だが、駅の防犯カメラには、数メートル手前から方向を変え、女性に向かっていく男の姿が写っていた。

インターネット掲示板などでこうした行為は「体当たり」と呼ばれ、「歩きスマホをする人のマナーを正すための注意喚起だ」などと称賛するようなコメントが目立つ。
中には「体当たりするの楽しい」などと暴力をあおるような内容も見受けられる。

背景には、スマホ利用中の事故そのものの顕在化がある。
東京消防庁によると、歩きスマホなどに絡む事故で救急搬送された人は、平成24〜28年の過去5年間で193人。
人や物との接触が全体の約46%で最も多く、20〜40代の搬送が6割近くを占めた。
歩きスマホの人への体当たりは暴行や傷害などに当たる犯罪行為で、決して許されるものではないが、トラブルの引き金となる“摩擦”の解消には、スマホ利用者側にも一定のマナーが求められそうだ。

一方、スマホを持ってわざと人にぶつかり、高額な修理代を請求する「スマホ当たり屋」の存在も各地で明らかになってきている。
「ぶつかったせいでスマホの画面が割れた。修理代を支払え」。
繁華街を受け持つ都内の警察署には、昨年からこうした当たり屋に関する相談や110番通報が相次いでいるという。

当たり屋の男は駅のトイレなどから出てくる人を狙って故意にぶつかり、「修理代の一部」として1万〜1万5千円程度を請求。
実際に支払ってしまった被害者もいるといい、警視庁が恐喝の容疑で調べている。

同様の被害は埼玉県でも発生。昨年2月にはJR大宮駅近くの路上で、同様の手口で修理代を請求しようとした20代の男が詐欺未遂の容疑で県警に逮捕されている。
もし自分が“標的”となった場合にはどうすればよいのか。

詐欺被害などに詳しい不動法律事務所(東京都新宿区)の小杉俊介弁護士は「真偽の分からない状態で、その場で修理代を支払ってしまうのは論外。
一緒に警察へ行くよう促すことで相手が引くケースもあるが、相手が被害を主張し続けた場合、警察の介入が難しいケースもある。
弁護士などを通じて、後日、正式に請求するよう告げるのがベスト」と説明している。

https://amd.c.yimg.jp/amd/20170731-00000069-san-000-6-view.jpg
https://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20170731-00000069-san-soci