土星の衛星タイタンの極地では、冬になると有毒の分子が激しい雨となって降り注ぐ。そして条件が整えば、この分子が集まって、地球上の生命が持つ細胞膜のような、膜状の構造を形成する可能性がある。

この有毒分子はシアン化ビニル(アクリロニトリル)と呼ばれるもので、タイタンの大気圏上部で形成される。7月28日付で学術誌『Science Advances』に発表された論文によると、タイタンのオレンジ色をしたもやの中には、このシアン化ビニルが大量に存在し、氷のように冷たい星の表面に降り注いでいると考えられるという。

タイタンの北極で2番目に大きな湖であるリゲイア海の中には、100億トンを超えるシアン化ビニルが含まれていると推測される。

湖の中に入ったシアン化ビニルがどうなるのか、またこの分子が本当に自己組織化するのかについては、まだはっきりしたことはわかっていない。しかしシアン化ビニルに膜を形成する力があると仮定した場合、タイタンの湖においては、生命の存在に必要な重要条件のひとつが容易に達成できるのではないかという推測が成り立つ。

「タイタンは、奇妙かつ独特な化学現象が見られる星です。現在までにわかっている証拠はすべて、この星で生命が存在するための作用が起きている可能性を示しています」と、米ジョンズ・ホプキンス大学のサラ・ホルスト氏は言う。

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