ある時、高校3年生のクラスでクレぺリン検査を実施した。クレぺリン検査とは、ランダムに並んだ1ケタの数字列があり、
その隣り合った数字を足した数の下1ケタの数字を答え、1分ごとに下の列に移りながら、合計30分行うものである。
「教育困難校」では途中で足し算に飽きてしまう生徒、集中力が途切れて誤答を書く生徒は珍しくないが、
ある男子生徒は2つの数字の足し算を暗算ではできずに、余白に計算を書き、さらに下1ケタだけでなく和をそのまま書いていた。
問題の求めるものが最後まで理解できなかったのである。

このような生徒は勉強を怠けていたからできないのではない。実は発達障害、学習障害があり、
それを高校生まで周囲に気づかれず、何のサポートもされなかった生徒である可能性がある。
最近、このような障害についてようやく認知度が高まり、こういった生徒を対象にした高校が
地域によっては設けられつつある。しかし、その数はまだ少なく、また保護者や生徒自身に
そのたぐいの高校への進学に対する抵抗感も強い。そのため、本来なら療育が必要な生徒が、
倍率の低い、または定員割れをしている「教育困難校」に多数入学している。