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政府紙幣は誰かに返す義務を負わないので債務ではない

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丹羽春喜『政府貨幣特権を発動せよ。』

平成10年3月末まで施行されていた旧「日銀法」では、日銀が「日銀券」を発行するときには、
担保と見なしうるような所定の金融資産的裏づけを必要とするものと規定されていた。

しかし、平成10年4月より施行されている現行の「日銀法」では、「日銀券」の発行には、
とくに担保を必要とはしないという規定に改められている。

したがって、日銀にとっては負債である「日銀券」が、そのように資産的裏づけ無しのままで、
多額に発行されたような場合には、日銀は債務超過に陥ってしまうことになる。

通貨に関する基本法である「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」(昭和62年、法律第42号)では、
「貨幣」(すなわち「政府貨幣」)の製造および発行の機能が政府に属するという
「政府の貨幣発行特権」(seigniorage セイニャーリッジ権限)がはっきりと明記(同法第4条)されており、
その発行には、なんらの上限も設けられておらず、政府はそれを何千兆円でも発行することができ、
担保も不要とされているのである。

しかも、発行された「政府貨幣」(「政府紙幣」や「記念貨幣」をも含む)の額は、政府の負債として計上されることもない。
その発行額は政府の正真正銘の財政収入となる。

つまり、「政府貨幣」の発行額(額面価額)から、その発行のための原料代や印刷費や人件費などのコストを差し引いた額は
「造幣益」(seigniorage gain)として「国庫」(中央政府の一般会計)に入るわけである。

もとより、そのような「政府貨幣」発行による「造幣益」に対しては、
政府が利息を払ったり償還をしたりする必要はまったくない。
巨大なデフレ・ギャップが存在していて、マクロ的に生産能力の余裕が十分にある現在のわが国のような状況のもとでは、
これは、国民(現世代、および、将来世代)の負担にも、いっさいならない。
まさに「打ち出の小槌」なのである。

わが国の現行の法令体系にごく素直に則って、この「打ち出の小槌」財源を活用しようと思うならば、
政府(中央政府)が、必要な所定額(額面金額の評価で)の「政府紙幣」をも含む「政府貨幣」
(それを記念貨幣・記念政府紙幣とすれば、現行法のままでも高額の額面のものになりえる)を、
造幣局または国立印刷局で鋳造あるいは印刷して製造し、
それを、前記の「通貨の単位および貨幣の発行等に関する法律」の第4条2項および3項の規定どおりに日銀に交付し、
それに相当する金額を、日銀が政府の口座に電子信号で振り込むことにすればよいわけである。

現在のわが国で、政府がこの「打ち出の小槌」財源を用いようとする場合、
現実的には「コイン形態での政府貨幣」あるいは「政府紙幣」を実際に巨額に発行する必要は、必ずしもない。

つまり、前記の「国(政府)の貨幣発行特権」は、いわば、政府が無限に多く持っている一種の無形金融資産であるから、
そのうちの、たとえば数十兆円ぶん、あるいは、数百兆円ぶんといった一定額ぶんの「政府貨幣発行の権利」を、
政府が日銀に売り、その代価を日銀から政府が受け取る形にすれば、それでよいわけである。

この方式であれば、「日銀券」とは別個の「政府紙幣」を、
わざわざ新たに印刷・発行しはじめるといったことまでやらなくても、よいことになる。

政府がその発行権の一定額ぶんを日銀に売るにさいして、ある程度の値引きをすることにすれば、
日銀は、この「政府貨幣発行権」の諸定額ぶんの取得によって、
日銀自身の資産内容を大幅に改善することができ、
日銀が債務超過に陥るといった前記の怖れからも脱却することができる。