これ、2002年に当時の小泉総理大臣が訪朝した際に、
日朝国交正常化交渉の開始がうまくいってたら、だいぶ違う未来になっていただろうね。

実際、当時の外務省も拉致被害者10人の情報開示と金正日(じょんいる)の
謝罪を条件に国交正常化交渉開始の方針を示していた。
日本政府には事前に10人の情報も伝えられていたから、外務省から小泉総理には
決して笑顔で対面せずに神妙な面持ちを貫くこと、という指示まで出ていた。
それがいざ現実はどうなったかと言うと、日本側が約束を破って
一時帰国した5人の被害者を北に返さなかった。
北はこれに激怒し、以後日朝関係はこじれにこじれる。
向こうからしたら国家元首が公の場で謝罪までしたのに約束を違えたのだから、怒るのも当然だ。

こう考えていくと、あの時5人の被害者を北に返さない決断をした人間の責任は
極めて重いと言わざるを得ない。
当の被害者本人たちですら北に帰ることを主張していたのに、
それを押さえてまで日本に残留させたのは外交上あまりに大きな判断ミスであったろう。
むろん5人が日本にとどまることで「情報」を得られるというメリットはあるが、
それ以上に国益を損ねたデメリットの方が大きい。

おまけに拉致家族会は「北への圧力」を主張。
これがそもそもからしておかしい。「家族を救ってください」とだけ言えばいいのに、
なんで救うための具体的な方策にまで国に言及するのか。
これが外交の足を大きく引っ張った。
拉致された被害者たちには同情するが、その関係者がことごとく日本の
負担になってきた現実がある。
その集大成として後戻りできない今日(こんにち)があると言えよう