農水省は、国内の農林水産業の潜在的な生産力を示す「食料自給力」について、2016年度の状況をまとめた。作付けを変えた4パターンで、国内の農地が供給できるエネルギーを試算。いずれも前年度より供給エネルギーは低下した。現状の食生活を保つことを念頭に置いて主要穀物を中心に作付けた場合は、1日に必要なエネルギー量の7割に満たなかった。16年度は6年ぶりに食料自給率(カロリーベース)も低下しており、食料安全保障の確保に向け、生産基盤の強化が待ったなしの課題であることを浮き彫りにした。

 食料自給率は、国内の食料消費を国内の農業生産でどれだけ賄えるかを示す指標のため、国内生産が減っても、高齢化で消費量が減れば釣り合いが取れ、国内生産の実力が見えにくい。そのため同省は食料自給力の公表を14年度に始めた。

 自給力は、再生可能な荒廃地も含めて農地を活用することを前提に、@現在の食生活に近い、一定の野菜や果物を取り入れるなど栄養バランスを考慮しながら主要穀物(米、小麦、大豆)中心A主要穀物中心B栄養バランスを考慮して芋類中心C熱量効率を最大化して芋類中心――に作付けする4パターンで示した。

 16年度で供給カロリーが最も低かったのは、@の1日・1人当たり1449キロカロリーで前年より1.3%減った。1日に必要な推定エネルギー量(2147キロカロリー)の67%にとどまる。Aの場合も供給できるのは前年比0.7%減の1814キロカロリーで、同84%だった。

 一方、Bは2.3%減の2339キロカロリー、Cは1%減の2660キロカロリーで必要な推定エネルギー量を上回った。だが、いずれも芋類が中心のため、国内生産だけで食料を満たすのは非現実的な状況だ。

 自給力の低下には、農地面積の減少が大きく響いている。16年度の農地面積は447万ヘクタールで3万ヘクタール減。ピーク時の1961年には609万ヘクタールあった。担い手への農地集積率は16年度は54%で2ポイント増えてはいるものの、高齢化による離農が加速する中で、担い手が農地を受け切れていない状況だ。

 一方、新規就農者は15年で6万5030人で6年ぶりに6万人を超え、うち、49歳以下は2万3030人で07年以降最多となっている。農地を守るには、こうした新たな担い手確保の流れを、さらに加速させることが必要になる。

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