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■外国人向け英語版冊子 大型扇風機 保水効果ある舗装

 大会招致時の立候補ファイルでは「この時期は晴れる日が多く、かつ温暖で、アスリートに理想的な気候」と記されたが、現実は大きく異なった。組織委はスポーツ医学など有識者による対策検討委員会を新設して、本格的な暑さ対策に着手した。環境省の熱中症対策ガイドラインなどを踏まえて、年度内に具体的な対策をまとめる方針だ。組織委の布村幸彦副事務総長は「きめ細かな対策につなげたい」と話す。

 熱中症対策の基本は涼しい環境とこまめな水分補給にある。組織委は「ラストマイル」と呼ばれる最寄り駅から競技場までの観客の動き、長い行列となる入場時の手荷物検査やチケットの確認、10万人規模のボランティアへの配慮などさまざまな場面を想定し、必要な対策を洗い出している。

 いずれも検討段階だが、手荷物検査を待つ観客向けに日よけを設置し、熱がこもらないように大型扇風機の導入を図る。競技会場では空調の利いた休憩スペースを確保して、自動販売機や給水機器を増設する。また、試合前後にアトラクションを実施して観客の入退場を分散させ、熱がこもる人混みを作らないように工夫する。外部の専門家からは暑さを避け、水分を補給するため都内に7000店超がある「コンビニエンスストアと積極的に連携を図るべきだ」との意見もある。

 東京都や国も対策に乗り出している。都は競技会場周辺の路面温度の上昇を抑えるために、都道などに遮熱材を塗布するほか、保水効果のある舗装を施すなど約136キロを整備する。国も環境省が各競技会場の暑さ指数を測定して、個別の対策に生かしていく。高温多湿の日本の暑さを未経験の外国人向けに英語版の冊子を作るなど情報提供に努める。環境省の担当者は「毎年行われる祭りや夏季イベントと違い、五輪は一回限り。想定が難しいからこそ、あらゆる対策を試みる必要がある」と説く。

 1964年東京五輪は10月に開催されたが、最近の夏季五輪は92年バルセロナ大会以降、南半球の00年シドニー大会を除いて7〜8月に開催されている。秋は米国のプロスポーツなどと競合し、国際オリンピック委員会(IOC)の収入源となっている放映権料を支出するテレビ局の視聴率に影響が出るためだ。

 IOCは20年大会も開催時期の範囲を7月15日〜8月31日と指定して立候補を募った。暑さを避けるため10月開催を提案したドーハ(カタール)は1次選考で落選した。組織委の布村氏は「この時期にやらざるを得ないのが大前提」と強調するが、招致段階では午前7時半だった男女マラソンの開始時間は早めることも検討されている。【田原和宏】