2017年08月15日 14時30分
 宇都宮大バイオサイエンス教育研究センター・児玉豊准教授らの研究グループは、「植物が低温を感知する仕組みを解明した」と発表した。

 植物の細胞内にある青色光受容たんぱく質「フォトトロピン」が温度を感知しているといい、この仕組みを応用できれば、冬場の農作物の収量増などが期待できるという。

 研究成果は、米科学アカデミー紀要(PNAS)の電子版に掲載された。

 児玉准教授らによると、植物は細胞内で葉緑体の配置を変えることで光合成の働きを調節している。低温下でも活発に光合成を行うと植物にとって有害な物質が発生するためで、低温下で葉緑体は「光から逃げる」(児玉准教授)ように細胞の側面に移動する。この動きは「寒冷定位運動」と呼ばれ、フォトトロピンが関与していることは、児玉准教授らが2008年に明らかにしていた。

 フォトトロピンは、青色光が当たると不活性型から活性型に変わり、葉緑体の同運動を誘導するが、時間がたつと、物質的に安定している不活性型に戻る。今回の研究では、不活性型に戻る際の時間が、「温暖だとすぐ」で、「寒冷だとゆっくり」であることが分かった。この差は、フォトトロピンが、温度の変化を感知しているためとみられるという。

 フォトトロピンの分子構造を変えることができれば、作物の成長を促進することなどが期待できるといい、児玉准教授は「今後、企業などと協力し、農作物の収量増の研究についても検討していきたい」としている。

http://yomiuri.co.jp/science/20170815-OYT1T50073.html
http://yomiuri.co.jp/photo/20170815/20170815-OYT1I50023-1.jpg
http://yomiuri.co.jp/photo/20170815/20170815-OYT1I50024-1.jpg