あの惨事を、酒を飲んでハンドルを握る罪深さを決して忘れてはならない。2006年8月、飲酒運転で「走る凶器」と化した車が一家5人の車を夜の海に突き落とし、3人の幼子の命を奪った事故から25日で11年を迎えた。現場となった福岡市東区の海の中道大橋や3児を弔う寺院では市民が静かに手を合わせ、加害者も被害者も出さぬ社会を目指して「飲酒運転ゼロ」を誓う集会も開かれた。

 ■園児ら花供え黙とう

 事故現場となった福岡市東区の海の中道大橋には25日朝、3児が大好きだったというヒマワリの花束やお菓子が供えられていた。

 静かに手を合わせた同市東区の団体職員鶴田孝義さん(73)は毎年、この日に訪れているといい「発生から11年がたち、事故を忘れてしまっている友人もいる。風化が一番怖い。飲酒運転は絶対にしてはいけない」と語った。現場近くでは、福岡東署の署員が海の中道大橋を通る車の運転手に飲酒運転防止を呼び掛けるうちわを配った。

 事故翌年の2007年、3児を供養する地蔵が設置された同市東区の妙徳寺には、近くの馬出保育所から園児43人が訪れ、黙とうをささげた。花束を手向けた園児(5)は「天国で楽しく過ごせるようにと心の中で唱えました」。阿部加奈子保育所長(58)は「飲酒運転がまだまだゼロにならず、胸が痛い。絶対に事故を忘れないように子どもたちに伝え続けていく」と誓った。

 ■飲酒運転撲滅大会 誓い新た

 福岡市・天神の都久志会館では「福岡県飲酒運転撲滅県民大会」が開かれ、約500人が参加した。

 県や県警などでつくる「交通事故をなくす福岡県県民運動本部」主催。飲酒運転事故で大学生だった娘を亡くした大庭茂弥さん(70)=福岡県糸島市=ら被害者遺族も参加した。

 小川洋知事は冒頭、6日に県職員が酒気帯び運転容疑で逮捕されたことを陳謝した上で「改めて職員の意識徹底を図る」と強調。元小学校教諭の福永宅司さんは、遺族の悲しみや飲酒運転のない未来への願いを表現する一人芝居を披露した。最後は県の「飲酒運転撲滅総監督」の福岡ソフトバンクホークス前監督、秋山幸二さんを中心に会場の全員で「飲酒運転は絶対しない、させない、許さない、そして見逃さない」とシュプレヒコールを上げた。

 県内の飲酒運転事故件数は3児死亡事故があった2006年の650件から14年には153件まで減少したが、15年に増加へ転じ、昨年は158件だった。

幼い3人の命を奪う飲酒事故が起きた海の中道大橋には、花やお菓子、ジュースが供えられていた=8月25日午前9時、福岡市東区
https://www.nishinippon.co.jp/import/national/20170825/201708250009_000.jpg?1503629942

=2017/08/25付 西日本新聞夕刊=
https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/353461/