タイに空自レーダー輸出…防衛省、来月入札に参加 基幹装備、中国牽制なるか 
産經新聞:2017.8.27 06:00更新
http://www.sankei.com/politics/news/170827/plt1708270004-n1.html

 防衛省が航空自衛隊の地上防空レーダーのタイへの輸出に向け、来月下旬に予定される入札に参加することが26日、分かった。
平成26年4月の防衛装備移転三原則の閣議決定で防衛装備輸出に道を開いて以降、東南アジア向けの大型輸出計画は初めて。
東南アジアに自衛隊の基幹装備を輸出できれば中国に対する強い牽制(けんせい)となるが、タイが対中配慮から導入に二の足を踏むとの懸念もある。

 防衛省はこれまで英国向けの海上自衛隊哨戒機やオーストラリア向けの海自潜水艦の輸出で競合国に敗れるなど失敗が続き、大型装備の輸出に成功した事例はない。
タイへのレーダー輸出は当面想定される大型案件としてはラストチャンスと位置づけられる。

 タイに輸出を計画しているのは空自のレーダー「FPS−3」。
三菱電機が製造し、空自は3年から運用を始め、全国7カ所で外国航空機の領空侵犯や領空接近に備え警戒監視にあたっている。

 FPS−3はアンテナを回転させずにさまざまな方向にレーダー波を照射し、多方向からのレーダー波も受信できる高性能のアクティブ・フェーズド・アレイ方式を採用しているのが特徴だ。
航空機などの探知・追尾能力に優れている。

 タイ空軍のレーダーは老朽化し、タイ側から空自のレーダーを導入できないか打診があり、防衛省はFPS−3に改修を加えた上で輸出する方針を固めた。
タイは3基のレーダーを導入する計画とされ、3基とも別々の国から輸入する可能性があり、イタリアなど欧州勢も入札に参加する厳しい受注競争が予想される。

 中国が南シナ海で人工島造成や軍事拠点化を進める一方、東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国の囲い込みも図る中、防衛装備を通じた加盟国との安全保障協力の強化は対中牽制の意味合いも大きい。
南シナ海で警戒監視の強化を目指すフィリピンに今年3月、海自の練習機「TC90」を貸与したのもその一環だ。

 タイへのレーダー輸出が実現すれば、レーダーの運用・整備での自衛隊による教育訓練や人材育成で継続的に連携を強めることができ、中国空軍の動向に関する情報共有も期待できる。

 ただ、タイは今年に入り中国から通常動力型潜水艦1隻を購入する契約を結び、中国との関係も深めており、中国が空自レーダーを導入しないようタイに圧力をかける恐れもある。