南への旅立ちを前に、ツバメ数万羽が夕空を覆う「ねぐら入り」が、奈良市の平城宮跡でピークを迎えた。

 古都に集まる渡り鳥の姿が、季節の移ろいを告げている。

 大極殿の南西、2メートルほどのヨシが茂る湿地の上空。生駒山に夕日が落ちる頃、至る所からツバメが集まってくる。刻々と数を増した群れは黒い渦のような乱舞を見せ、宵闇が迫ると次々にヨシに降り立った。

 桜前線とともに日本に飛来したツバメは、秋になると長旅に備えるため、列島各地の中継地で栄養を蓄えながら南下する。平城宮跡に広がるヨシ原は、全国有数のツバメのねぐらとして知られており、日本野鳥の会奈良支部によると、今月中旬時点で約6万羽を観測したという。

 休耕田や湿地が土地開発などで失われる中、平城宮跡に集まるツバメの数は年々、増加している。「単なる空き地に見えても、鳥たちにとっては貴重な休息の場。理解を求め、保全していきたい」と同支部副支部長の中元市郎さん(63)は話す。今月いっぱいは見られるという。

 近くの奈良ロイヤルホテルでは2年前から宿泊者対象のプランを作り、スタッフが案内している。浜松市から訪れていたタクシー運転手の男性(56)は「旅行計画中に『ねぐら入り』を知り、楽しみにしていた。四方八方から現れて頭上を舞う姿は想像以上だった」と目を細めた。(大橋彩華)

2017年08月27日 13時32分
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