(続き) 
◆長い旅の終わり 
パイオニア10号には金メッキの銘板が取り付けてある。
人類の男女の姿とこの機械がどこから来たのかの情報が刻まれている。 
この銘板をデザインしたひとり、6年前に62歳の若さで亡くなったカール・セーガン博士がこの中に生きている。 
パイオニア10号は30万年後に地球から約10光年離れたロス248番星を通過する。 
太陽のたった17%の大きさの星で、生命を宿す惑星を従えている可能性は少ない。 
その後パイオニア10号は限りなく永遠に近い長い孤独な銀河の旅を続けるだろう。 
この旅が終わりのないものとは信じない。
やがて銀河の果てで、ある文明と遭遇し、人類からのメッセージを届けるだろう。 
その惑星の博物館に大事に、大事に収められた時、パイオニア10号の旅は終わるのだと思う。 
その惑星の子供達に見守られながら。 

パイオニア10号は単なる機械ではない。
我々人類の一部である。 
やがて地球上の人類が滅びても、我々は永遠にパイオニア10号の中に生き続けるのだ。 
冒頭でパイオニア10号を「生命」と呼んだ理由がこれで分かっていただけたと思う。