環境省が主催する“名水選挙”で「おいしさ日本一」に輝いた神奈川県秦野市の地下水の秘密を探るため、市が今月から地下の掘削工事に乗り出す。

 200メートルの深さまでボーリングする異例の取り組みで、市は5年後をめどに秦野を潤す地下水の全体像を明らかにしたい考えだ。

 秦野盆地の地下には表丹沢の山々に降った雨水が流れ込んでいるとされ、その量は2・8億トンと芦ノ湖の1・5倍に上るとみられている。1970年の電磁波を使った探査で明らかになったもので、地下水は砂礫されき層をゆっくりと移動しながら市の南東部で地表に噴出し、川を伝って相模湾に注いでいるのだという。

 地下水の一部は、水を通さない固い基盤岩(凝灰岩)の上にたまり、浅いところで地下5〜10メートル、深いところでは150〜200メートルの帯水層として、「天然の水甕みずがめ」を形成しているという。

 市が深さ200メートル級のボーリング調査を行うのは初の試みで、市環境保全課の谷芳生課長は「ボーリングで直接確かめることにより、こうした過去の数字が変わる可能性も出てくる」と期待を込める。

 調査は同市平沢のカルチャーパーク一帯で年末まで行い、今月中旬にやぐらを組んだ後、地下深くを掘り進めながら基盤岩の構造などを調べる。

 ボーリング孔を利用して水量や流れの速さも測定するほか、孔にたまった水位を常時観測することで、地下水の保全状態もチェックできるという。市は来年度も数か所で200メートル級の掘削を続けながら調査範囲を拡大していく方針だ。(中村良平)

http://yomiuri.co.jp/photo/20170906/20170906-OYT1I50019-1.jpg
http://yomiuri.co.jp/eco/20170906-OYT1T50038.html