http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170911/k10011134741000.html?utm_int=news-new_contents_list-items_001

3000人近くが犠牲となったアメリカ同時多発テロ事件から11日で16年です。
アメリカではトランプ政権の下で、白人至上主義者とそれに反対するグループの対立が
先鋭化していることで、これまで差別に直面してきたイスラム教徒のあいだで不安が
広がっているほか、同時多発テロ事件の遺族のあいだでも危機感が強まっています。

アメリカ南部バージニア州では先月、白人至上主義などを掲げるグループと、これに抗議する
グループが衝突し、白人至上主義者と見られる男に女性が車ではねられて死亡し、30人余りが
けがをしました。
この事件を受けて、アメリカに住むイスラム教徒の間では、事件をきっかけにした憎悪の連鎖が
広がれば、次は自分たちが標的になりかねないという危機感が強まっています。

背景には、同時多発テロ事件のあとイスラム教徒に対する差別や偏見が広がり悩まされた
経験があるだけでなく、近年、イスラム教徒を標的とする差別に基づく犯罪=ヘイトクライムや
嫌がらせが相次いでいることがあります。ことし前半だけでも、そうした事件は1400件余り起き、
去年の同じ時期と比べて35%も増加しています。

社会の分断が深まることへの戸惑いは、同時多発テロ事件で最愛の家族を失った人の間にも
広がっています。ロビン・ドナティさん(53)も、その1人です。

16年前の同時多発テロ事件で、世界貿易センタービルの保険会社に勤めていた母親を亡くしました。
ロビンさんはイスラム教徒だった実行犯に対する怒りとともに、なぜあんなことをしたのかと困惑し、
10年ほど前からイスラム教についての勉強会に通うようになりました。そうした努力を通じて、
「ほとんどのイスラム教徒がテロとは関係ないということを明確に理解できた」というロビンさん。
バージニア州での事件を見て、憎悪の連鎖が広がりかねないと直感し、友人らを集めて、
イスラム教徒への偏見をどうすればなくせるのかを議論する会も催しました。

「私はテロ事件の遺族として声をあげなければならない特別な立場にあると思っています」というロビンさん。
同時多発テロ事件から16年を経た今こそ、対立をあおる言動を控え、融和へと踏み出すべきだという
思いを強くしています。