今夏の記録的な長雨と低温で、宮城県内の農家が2017年産水稲の作柄に不安を募らせている。より冷害が深刻とみられるのは西部の中山間地。本格的な稲刈りシーズンを前に、加美町宮崎、小野田の両地区を歩いた。(加美支局・佐藤理史)

◎加美・中山間地を歩く

宮崎と小野田が接する地域は、もち米「みやこがねもち」の一大産地。8月前半の出穂から約1カ月がたった。例年なら穂先が緑から黄色、間もなく黄金色へと変わる時期だが、今年は景色が違う。

遠目には、焦げ茶色に見える。8月の日照時間が平年の約4割にとどまるなどした影響で、褐変(かっぺん)もみが多く発生している。近づいて目を凝らすと、茎がまだらに枯れる「紋枯病」、穂に黒色の菌塊が付く「稲こうじ病」が一部で広がっていた。いずれも低温や多湿で増えるとされる。
 
水稲を約60ヘクタールを作付けしている株式会社「原グリーンサービス」の佐々木慶信社長(63)は「収穫してみないと分からないが、くず米が多く出て、2割、悪ければ3割以上収入が減ると予想している。大豆や野菜も出来が悪く減収を補うこともできない」と頭を抱える。

加美よつば農協(色麻町)によると、被害は平たん地の中新田、色麻では少なく、中山間地の宮崎、小野田で多く報告されている。海抜80メートル前後が境目となっており、西へ行くほど深刻な状況だという。
 
東北農政局が8月30日に発表した15日現在の作柄概況が「やや良」(平年比102〜105%)だったことに戸惑いの声が挙がる。

同農協の松本憲専務は「調査では北部はひとくくりになるが、登米市や美里町といった北東部とは状況が違うようだ。きめ細かく被害状況を把握し、対策を練りたい」と力を込める。

宮崎、小野田両地区で稲刈りが本格化するのは今月20日ごろ。実入りが進む好天が続くよう、農家は祈る思いで空を見上げる。

配信2017年09月10日日曜日
河北新報
http://www.kahoku.co.jp/tohokunews/201709/20170910_13013.html