>>1の 続き

・どこでもいいわけじゃ…

 それにしても、同じ休むのであれば、高速道路のサービスエリアなどを利用すれば済む話。運転手はなぜ、駐禁のリスクを冒して路上駐車をするのか。

 「俺らにとったら時間通りに現着するのが一番大事だから。絶対に遅れられない」

 反則切符を交付された運転手の1人は打ち明ける。

 物流の世界は納品先への「時間厳守」が大原則で、一分一秒の遅れは死活問題。納品先から離れた高速道路のサービスエリアで調整するよりも、先方がまだ営業していない早朝の時間帯に近くまで来ておき、路上で時間を調整する方がいい、というのだ。

 経費節減という背景もある。大型車駐車可能のコインパーキングは1回当たりの金額が少額とはいえ有料。また、高速料金も深夜移動の方が割安で、「たとえ数百円であっても節約したい」という本音が垣間見える。

 30年以上長距離運転手を続けている男性(66)は取材に対し、「どこに止めるにしても、近隣の人に迷惑はかけんようにしているつもり」と話す。

 大阪を拠点に、北海道から九州まで全国に自動車部品を運んでいるこの男性によると、同様の路上駐車の光景は、全国各地でみられるという。

 「広い道の路肩に止めて待つのが基本だが、どこでもいいわけじゃない。エンジンをかけて待つため近隣に民家がないこと、トイレや朝食を近場で済ませられるかなど、周囲の環境もポイント」

 府警が取り締まりを行った市道は、目の前の公園にトイレがあり、コンビニが近くに数件ある。道幅は広く、近くが公園ということで住宅への騒音をそれほど心配しなくていい。「大阪市内にも門真方面にも行きやすいし、運転手からすると最適」(男性)な好立地というわけだ。

 関係者によると、かつてはトラックに積んだ無線を使い、容易に路上駐車ができる全国各地のスポットについて情報交換をしていたが、現在は携帯電話のSNSなどを使ったやりとりが主流という。

・エンジン音、窓からごみ…一部にマナー違反も

 今回の取り締まりは、府警が事前に運転手らに警告を重ね、それでも状況が改善しないために踏み切ったものだ。府警鶴見署によると、近隣住民や道路沿いの公園の利用者らからは、エンジン音や排ガスへの苦情のほか、窓からごみを捨てるなど、一部の運転手のマナーの悪さを指摘する声も届いていた。

 ただ、取り締まり対象となった運転手にもそれぞれ事情があったようだ。

 埼玉県から荷物を積んで大阪に到着、別の大型トラックの後ろに駐車していて反則切符を交付された男性運転手(57)は、初めてこの道を使ったという。「暗くて標識も見えないし、他にも止まっていたので大丈夫だと思って…」と困惑気味。大阪で荷物を積み替え、福井県まで運ぶといい、「(駐車違反をとられたのは)25年やっていて初めてだ」とぼやき、目的地へと向かった。

 辺りがすっかり明るくなったころには、トラックは1台、また1台と動きだし、路上から姿を消した。運転手の1人は「何も考えずに好き勝手に止めているわけではないし、混雑する時間帯までには動く。違法だということは分かっているけど、大目に見てほしいと思う部分もあるよ」とこぼし、走り去った。

 インターネット通販の利用増加などで、運転手の長時間労働が問題となっている物流業界。運転手の過労運転は避けなければならない問題だが、違法駐車が許されるわけではない。ルールやマナーを守りながら、運転手の負担を軽減する仕組み作りが、業界全体に求められている。