自宅や施設で亡くなる人の死亡診断について、厚生労働省は過疎地や離島などで医師が駆けつけるまでに時間がかかる場合、スマートフォンなどで看護師から情報を受け取り、離れた場所でも診断できるとする新たなガイドラインを作り、12日、全国の都道府県などに通知しました。




医師法では死亡診断を行う場合、医師がみずから診察することを義務づけています。しかし、過疎地や離島では医師が少なく、すぐには患者のもとに駆けつけられないケースがあり、自宅で最期を迎えたいと希望していた患者が入院を余儀なくされるなどして、自宅での「みとり」が困難になることもありました。

厚生労働省は離れた場所にいる医師がスマートフォンなどを使って患者の状況を確認し、死亡診断を下せるよう新たなガイドラインを作り、12日、全国の都道府県などに通知しました。

その方法は看護師が患者の自宅や施設を訪問して心臓や呼吸の停止を2度確認したうえで写真やデータをスマートフォンなどを使って医師に送ります。医師は集めた情報を基に患者の死亡を診断し、テレビ電話などを通じて遺族に説明し、看護師が死亡診断書を遺族に手渡すとしています。

厚生労働省は遠隔での死亡診断を行う条件について、医師が到着するまで12時間以上かかり、患者や家族が事前に同意し、死期が近づいている場合などとしています。

厚生労働省は今年度中に看護師を対象にした研修を行ったうえで、遠隔での死亡診断を始める予定です。

■背景に「自宅で最期を迎えられるように」との考え

厚生労働省が遠隔による死亡診断のガイドラインを作った背景には、希望する患者ができるだけ住み慣れた自宅で最期を迎えられるようにしようという考えがあります。

内閣府が平成24年に55歳以上の2000人近くに行った調査では、「治る見込みのない病気にかかった場合、どこで最期を迎えたいか」という質問に対し、「自宅」と答えた人は55%と半数以上に上り、「病院などの医療施設」と答えた割合(28%)を大幅に上回り、住み慣れた自宅で最期を迎えたいという人が多くを占めました。

しかし実際には、医療機関で亡くなる人が多く、厚生労働省によりますと、おととしは全体の77%に上りました。

過疎地や離島では医師が到着するまでに時間がかかるため、入院を余儀なくされる患者もいることから、厚生労働省は遠隔での死亡診断ができるようガイドラインを作りました。

高齢化が進み、去年の年間死亡者は130万人に上り、ピーク時とされる22年後には167万人まで増えると予測されています。

■厚労省 「適切な診断へ研修に力を入れたい」

今回のガイドラインについて厚生労働省医事課の武井貞治課長は「高齢化が進む中、1人でも多くの人が住み慣れた土地で家族にみとられながら最期を迎えられるようにする初めての取り組みで、適切な診断を下せるよう研修などに力を入れていきたい」と話しています。

配信9月12日 18時28分
NHK NEWS WEB
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20170912/k10011136731000.html