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【9月13日 AFP】「こんな夏は二度とごめんだ」──押し寄せる観光客のせいで、街に住みづらくなったことにいら立ちを強めたスペイン・バルセロナ(Barcelona)の住民たちが抗議に立ち上がった。

 欧州内の一部には観光業を敵視する動きが広がっている。スペイン北東部カタルーニャ(Catalonia)自治州にあり、観光客に大人気のバルセロナもそうした街の一つだ。

 世界の旅行者数は、1995年の5億2500万人から2016年には12億人に増加。背景には、格安航空会社の参入や、中国やインド、湾岸諸国といった新興市場の観光客が増えていることが挙げられる。その結果、一部の地域に観光客が集中するという現象が起きている。

 イタリア・ベネチア(Venice)のロマンチックな運河から、クロアチアにある中世の城塞都市ドゥブロブニク(Dubrovnik)、英スコットランド(Scotland)スカイ島(Isle of Skye)の原野まで、観光業は地元に間違いなく雇用と収入をもたらすが、その一方で、大勢の住民にとっては悪夢になりつつある。

 バルセロナ市内のおしゃれな臨海地区バルセロネータ(Barceloneta)の住民は以前から、公共の場で泥酔したり性行為に及んだりする反社会的行為の横行に加え、家賃高騰で多くの地元民が追い出される事態に不満を募らせてきた。先月には、世界中から訪れる観光客がお祭り騒ぎを繰り広げるビーチに数十人の地元住民が集まり、「私たちの建物に観光客はお断り」という横断幕を掲げて抗議デモを行った。

 世界第3位の観光大国であるスペインでも同様のデモが各地で開かれている。この夏、観光客に人気のバレアレス諸島(Balearic Islands)マヨルカ(Majorca)島の港町、パルマデマヨルカ(Palma de Mallorca)に活動家らが突然やって来て発煙筒をたき、レストランで食事中の人々に紙吹雪を投げ付けた。バルセロナでは大勢の観光客を乗せたバスが襲撃され、フロントガラスにペイントされた抗議のメッセージに乗客がおびえる出来事もあった。

 観光客が過度に集中する問題は、一連の抗議行動だけにとどまらず、当局も対策に乗り出している。

(中略)

■「最悪なのは誰も来ないこと」

 ポルトガルの首都リスボン(Lisbon)で最も古い町並みが残るアルファマ(Alfama)地区でも、観光客の急増は住民に大きな悪影響を及ぼしている。観光客向けのアパートが至る所に増えたせいで家賃が高騰。「月1000ユーロ(約13万円)未満の家賃のアパートがなかなか見つからなくなった。ポルトガル人の月収は一般的にこれより低いことを考えれば、今の家賃は高過ぎる」と、地元の町並み保存協会の代表は言う。

 人里離れたスコットランドのスカイ島でさえ観光客が増え、環境被害や居住施設の不足といった苦情が住民から出始めている。

 一方で、抗議と批判にさらされたスペインのマリアノ・ラホイ(Mariano Rajoy)首相は、同国の経済成長の11パーセントを担っているのは観光業だと擁護した。

 国連世界観光機関(UNWTO)のタレブ・リファイ(Taleb Rifai)事務局長も、観光業にノーを突き付けることには反対だ。「観光ブームはうれしい悲鳴。最悪なのは、誰も来ないことなのだから」と話している。(c)AFP/Daniel BOSQUE

「さよならベネチア」と書かれたスローガンを貼り付けたスーツケースを掲げ、観光客増加に抗議する男性。イタリア・ベネチアで(2016年11月12日撮影)。(c)AFP/MARCO BERTORELLO
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2017年9月13日 14:35 発信地:バルセロナ/スペイン