地域と学校が連携して子供の成長を支える「協働活動」の普及に向け、文部科学省が新たな指針を作成した。両者のつなぎ役となる人材を育てたり、自治体が推進計画を策定したりすることが柱。協働活動に取り組む学校数は伸び悩んでおり、同省は指針をてこに2022年度までに全小中学校で実施したい考えだ。

 同省は学校と地域の連携を進める事業を約10年前から開始。貧困や陰湿ないじめなど子供を取り巻く環境が複雑化し学校だけで取り組むことが難しいため、地域住民や企業、NPOなど幅広い支援を得て、課題解決にあたる狙いがあった。

 17年度までに全市町村で協働活動を行う目標を掲げていたが、16年度時点で実施自治体は約670市町村にとどまった。学校側に地域との連携のノウハウがなかったり、予算が不足していたりしたことなどが背景にある。

 指針の狙いの一つは、受け入れる学校側の負担軽減だ。学校と地域の橋渡し役となる「地域学校協働活動推進員」の配置を推奨。地域に詳しい自治会の関係者や教職員OBなどが推進員の候補で、学校の事情や地域の要望をとりまとめ、両者の役割を調整する。

 指針は、推進員が中心となって「地域学校協働本部」を立ち上げることも促す。推進員が地域のボランティアなどを束ねて郷土学習を実施したり、放課後に学習支援の教室を開いたりする場として活用する。

 学校や地域の取り組みを支えるため、都道府県や市町村が、地域の子育てのあり方など、将来構想(ビジョン)を作る重要性も指摘した。

 指針では参考になる先行事例を紹介。学生ボランティアを集めて開く中高生向けの学習支援教室、企業と連携したロボットのプログラミング教室など住民が教育に関わる試みのほか、生徒の福祉施設訪問など子供が地域づくりに参加する活動も挙げている。

 文科省は指針に基づき協働活動を普及させるため、来年度に推進員を今年度より1割強多い2万人にすることを目指す。地域住民が放課後に小学校で勉強を教えたり、一緒に遊んだりする「放課後子供教室」も1割強増の2万カ所に増やしたい考えだ。

 同省は「指針への都道府県教委からの問い合わせも多く、手応えを感じている。協働の取り組みが増えるきっかけになれば」(社会教育課)としている。

配信2017/9/14 1:51
日本経済新聞
https://www.nikkei.com/article/DGXLZO21100560T10C17A9CR8000/