【9月14日 AFP】アフリカ東部に生息するゾウは密猟者から逃れるために、まるで脱獄囚のように夜間に移動し、日中は身を潜めていることを学習しているとの研究結果が13日、発表された。象牙を目的とする密猟により、アフリカゾウは絶滅の危機に追いやられているという。

 ゾウは本来、昼間に餌探しと移動を行い、夜の暗闇に紛れて眠る。

 だが、世界規模の象牙取引に後押しされた密猟の急増により、大型陸生哺乳動物のゾウは本来の性質に逆らって、通常の習性を逆転させることを余儀なくされている。

 オランダ・トゥウェンテ大学(University of Twente)の研究者、フェスタス・イホワギ(Festus Ihwagi)氏は「密猟の大半は昼間に行われるため、ゾウの夜行性行動への移行は、現行の密猟レベルの直接的な結果だと思われる」と説明する。

 生態学誌「Journal of Ecological Indicators」1月号に発表予定のイホワギ氏の研究は、ケニア北部に生息するゾウ60頭から収集したデータに基づくものだ。ゾウはGPS(全地球測位システム)機器を用いて、最大3年間にわたり追跡調査した。

 調査は、ゾウ100頭以上にGPS首輪を取り付けている保護団体セーブ・ジ・エレファンツ(Save the Elephants)と協力して2002〜2012年の間に行われ、ケニア北部のライキピア(Laikipia)やサンブル(Samburu)およびその周辺地域における雌28頭、雄32頭の行動を観察した。

 雌は結びつきの強い群れの中で暮らし、自身の子どもを傍らに伴っていることが多い。一方の雄は単独で行動する傾向がある。

 密猟がどのようにして、またどの程度、ゾウの行動に影響を与えたのかを判断するため、イホワギ氏は2種類のデータを比較した。

 1つは、日中と夜間の移動距離を測定・比較したデータで、もう1つは、セーブ・ジ・エレファンツによるゾウ密猟に関するデータベース「Monitoring the Illegal Killing of Elephants、MIKE」から抽出した、密猟がおおよそ活発に行われている区域と時間帯を特定したデータだ。

■過去10年で約11万1000頭減

 ゾウの夜間行動は、密猟の激しさの度合いに同調して有意に増加していた。この傾向は特に雌に関して顕著だった。

イホワギ氏はAFPの取材に、危険度が高い区域では、雌は日中の活動を、危険度が低い区域の平均約50%まで減少させていると説明した。

 このような行動パターンの変化は、短期的には死を回避する上で助けになるかもしれないが、長期的にはその影響が逆に作用する恐れがあると、イホワギ氏は続けた。

 高い知能を備えているにもかかわらず、ゾウは進化の時間スケールの中で発達させ深く根づかせた採餌戦略と繁殖様式によって、その適応力に制限が生じる可能性がある。

 イホワギ氏は、「幼い子どもを伴った母親ゾウにとっては、ライオンやハイエナに子ゾウを補食されるリスクは夜間の方が高くなると考えられる」と指摘しながら、「成熟したゾウでは、これは通常の社会生活の変容を意味する」と説明した。

 国際自然保護連合(IUCN)によると、アフリカゾウの個体数は過去10年で約11万1000頭減の41万5000頭にまで減少したという。

 象牙製品は伝統薬やステータスシンボルとして用いられ、主にアジア市場での需要が高い。この需要を満たすために毎年3万頭前後のゾウが違法に殺され続けている。(c)AFP/Marlowe HOOD

http://www.afpbb.com/articles/-/3142845
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