https://mainichi.jp/articles/20170917/k00/00m/040/089000c

毎日新聞 2017年9月16日 22時00分(最終更新 9月16日 22時00分)
自然科学研究機構基礎生物学研究所

 自然科学研究機構基礎生物学研究所(愛知県岡崎市)の研究グループは、肥満の場合は脳の中で特定の酵素が増え、食欲を抑制する体内のホルモンの働きをブロックしているとする研究成果を、英電子版科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」で発表した。肥満をつかさどる脳内メカニズムの発見という。

 食事をすると、体内の脂肪細胞から「レプチン」というホルモンが分泌され、脳の摂食中枢に働きかけて食欲を抑制する。しかし、肥満の場合、食欲が止まらない「レプチン抵抗性」が起きており、原因は不明だった。

 研究グループは、肥満が進むと脳内に現れる酵素「PTPRJ」に注目した。通常のマウスと、遺伝子が欠損してこの酵素が作れないマウス各12匹に、生後16週まで高脂肪食を与えた。

 その結果、遺伝子欠損マウスは体重が14%、体脂肪は40%少なかった。高脂肪食を食べ続けるとこの酵素が増え、レプチン抵抗性が生じて肥満が進むが、酵素が欠けている場合は抵抗性が生じずに摂食量が抑えられたため、酵素がレプチンの食欲抑制を妨げていると結論づけた。

 研究グループはこの酵素が血糖値を下げるインスリンの働きを妨げていることも解明している。リーダーの新谷隆史准教授(神経生物学)は「酵素の働きを抑制する薬を開発できれば、肥満と糖尿病の双方を改善できる可能性がある」と説明している。【亀井和真】