モーリー・ロバートソン
オットー・ワームビア氏の死因が明らかになるかどうかはわかりませんが、彼が米朝対立の中で「政治利用」されたことは間違いありません。
米メディアの報道によれば、彼が参加した北朝鮮ツアーの主催者は、2008年にイギリス人が中国・西安で立ち上げたヤング・パイオニア・ツアーズ社。
北朝鮮以外にもウクライナのチェルノブイリ原発事故災害現場や独裁国家のエリトリア、国家崩壊危機にあるイエメン、イラクのクルド人自治区などへのツアーを実施し、「お母さんが心配するような冒険を約束します」というのが宣伝文句でした。
同社が企画した過去の北朝鮮ツアーでは、スタッフも参加者も現地で相当ハメを外していたようで、酒を飲みまくって乱痴気騒ぎをするのは当たり前。
なんと、北朝鮮人民にとって最も神聖な場所ともいえる。
「クムスサン太陽宮殿」(金日成・金正日親子の遺体が安置されている場所)で逆立ちをしている写真がネット上にアップされたことも……。
過去の参加者は「動物園に行ってオリ越しに猛獣をからかって遊んでいるような感じだった」と、ツアーの雰囲気をふり返って証言しています。
ワームビア氏が北朝鮮で何をしていたのかはわかりませんし、それ以前の大前提として、北朝鮮側の人権無視は許されるものではありません。
ただ、少なくとも彼の参加したツアー主催者が、危険な"火遊び"を奨励するような形で客を集めていたのは紛れもない事実です。
ちなみに、同社で北朝鮮ツアーを主に仕切っていた人物は、現在ではフィリピンに拠点を移し、東南アジア各地で"買春ツアー"のようなものを堂々と主催しているようです。
旅先の人や文化を見下し、好き放題に振る舞う――こうした傾向は、欧米の白人ツアー客にしばしば見られるものです(今に限ったことではなく、昔から)。
そうした横暴を、かつて多くの国の人々は商売のために我慢してきたわけですが、それが今、各地で台頭する愛国ポピュリズムや外国人排斥という形で"逆流"してきているのかもしれません。
(週刊プレイボーイ 2017-30号)より