タバコに含まれるポロニウム210は最強の放射性物質

210Poは半減期が短いため、極めて強い放射能を持つ。1gの210Poは約166TBqの放射能を有し、これは同質量の天然ウランの約65億倍も強い。

210Poを1万Bqを吸引した際の実効線量は22mSv、経口摂取した場合は2.4mSvとなる。
比放射能が強く、アルファ線という電離作用の強い放射線のため、その毒性は放射性物質の中でも極めて強い。
体重70kgの成人男性の場合、111MBqで致命的であると推定されている。これは質量に換算してわずか670ngであり、塩粒より小さな程度でしかない。
半数致死量の数値で比較すると、シアン化カリウムの37万倍、人工物で最も毒性の強いVXガスの240倍毒性が強く、知られている中で最も毒性の強い物質であるボツリヌストキシンは、210Poの約10倍毒性が強い程度である。

一般人が210Poを体内に摂取する経路は、特に健康上の問題を考えるほど大量の場合を想定する場合には、主にタバコに由来する。
ウラン濃度の高いリン鉱石から作られた肥料には226Raが含まれており、肥料を使用すると、226Raが崩壊して生成される222Rnが大気中から放出される。
そして222Rnから崩壊した210Pbがタバコの葉の毛状突起に付着する。そして210Pbが210Biを経由して210Poへと変化する。
210Poは煙と共に体内に吸引される。喫煙に起因する肺癌の少なくとも2%は210Poによるものとする推定もある。