ギャンブル依存症:苦悩する人たち/上 56歳男性のケース /熊本

 熊本市の男性(56)は約5年前に自己破産した。消費者金融やヤミ金融などから約1500万円の借
金を重ねていた。それまで家族に負担を頼んだ総額は数千万円。反省しない様子に5回以上も息子
から殴られた。男性を借金地獄に追い込んだのはパチンコだった。
 短大を出て車販売会社に就職した。営業で外回り中「時間をつぶそう」と軽い気持ちでパチンコ店に
入ったのが始まり。無我夢中で気付けば初任給5万円の半分以上をつぎ込んでいた。負ければ「どう
暮らしていけばいいだろうか」と落ち込んだ。しばらくパチンコからは遠ざかったが酒や女性におぼれた。
20代半ばで借金は百数十万円になり、母に肩代わりしてもらった。29歳で妻と離婚した。
 「どうでもいいや」。自暴自棄になって、パチンコも再開した。初めは1回5000〜1万円で、月に2〜3
回のペース。消費者金融への毎月の返済はできていた。徐々にエスカレートし1回で5、6万円をつぎ込
み、月50万円使ったことも。9万円を元手に10万円にすると実際のもうけは1万円なのに「10万円勝っ
た」と思い込んでしまう。翌日6万円負けても「まだ勝っている」と思った。
 05年2月、再び母からヤミ金への借金80万円を肩代わりしてもらう。パチンコが原因で1カ月後、再び
同じ業者から100万円を借りた。家から逃げ出し、自殺を考えながら4カ月の車上生活をした。公園で子
供を連れて歩いている親の姿が目に入った。「借金をしていなかったらこんな生活があったのか」。我が
身を振り返った。
 実家に帰り自己破産の手続きを取った。兄に勧められ菊陽病院(菊陽町)に入院した。病院に行く前は
反発もしたが「ギャンブル依存症」と聞いて「病気だったのか」と妙に安心した。院内の自助グループに参
加し、同じ問題を抱えている人たちと話し合う中で、自分が大切にしてもらっていたのに周りの人を傷つけ
てばかりだったことに気付いた。
 現在は毎日のように各地の自助グループで語り合う。昨年は全国の自助グループが集まる大会で司会
を務めた。「ただギャンブルをやめるだけでは苦しい。成長していきたい」と、新たな道を歩き始めている。
http://mainichi.jp/area/kumamoto/news/20100527ddlk43040525000c.html