東芝の米原発事業による巨額損失をめぐり、金融商品取引法違反(有価証券報告書の虚偽記載)の疑いがあるとして、証券取引等監視委員会が調査する方向で検討していることが1日、関係者への取材で分かった。東芝は平成29年3月期決算に約6500億円の損失を計上したが、監視委はこのうち数千億円については28年3月期に計上すべきで利益の過大計上の疑いがあるとみているもようだ。

 東芝は27年4月に発覚した国内部門の不正会計で過去最高となる約73億円の課徴金納付命令を受けたが、調査の結果、虚偽記載と認定されれば、再び課徴金納付命令勧告が出される。

 虚偽記載の疑いがあるのは、米原発事業の子会社だったウェスチングハウス・エレクトリック(WH、経営破綻)が27年12月に買収した米原発建設会社で発生した損失約6500億円の会計処理。

 損失は認識した時期に計上するルールがあり、東芝は28年秋頃に認識したとして、29年3月期に約6500億円の損失引当金を計上した。これに対し東芝の監査を担当したPwCあらた監査法人は、27年12月の買収直後から28年3月までに、相当程度か全てを認識できたはずだとし、28年3月期の訂正を求めた。

 東芝はPwCあらたから監査意見をもらえないため、6月の有価証券報告書提出期限を8月に延期。最終的にPwCあらたは28年3月期に計上しなかったのは誤りだと指摘した上で、決算全体への影響は限定的として「限定付き適正意見」を出し、東芝は有報を提出した。

 関係者によると、監視委はPwCあらた同様、損失認識の時期が28年3月期中で、同期の利益が過大に計上された疑いがあるとみている。数千億円規模の損失額についても決算全体への影響は小さくなく、投資判断に重大な影響を与えたとの見方を強めており、決算の不正を調査する開示検査を実施する方向で検討しているという。

 東芝をめぐっては、パソコン事業での不正会計が悪質な粉飾に当たるとして、監視委が歴代3社長の金商法違反罪での刑事告発に向け調査を続けている。

 【用語解説】東芝の不正会計問題 損失の先送りなどにより、東芝が平成21〜26年に計2248億円の利益を水増しした問題。27年4月に発覚し、多くの事業で「チャレンジ」と称した過大な収益目標の達成を求める経営トップの圧力が背景にあったとされ、同年7月に田中久雄元社長ら歴代3社長が引責辞任。経営再建中の28年12月には米原発事業をめぐり数千億円規模の損失が出る可能性を発表した。


配信2017.10.2 05:57更新
産経ニュース
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