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 市によるとクマに限らず、有害鳥獣の捕殺には、常に数件の批判や苦情が寄せられるという。担当者は「命に関わることですから、皆さんの気持ちはよく分かる。たまに感情的な人もいるが、事情を説明すると納得してくれる」という。しかし、今回は小学校で児童の在校時でのできごととあって、市や小学校への電話やメールなどは計20件を超えた。ただそれらは保護者や地元の人からではなく、すべてが県外からだった。

■クマに襲われるという身近な現実

 学校近くに住む中年男性は「動物園やテレビで見るクマは安全な場所から眺めるので、どうしてもいとおしさを感じる。それを射殺した風景を思えば、抗議があるのも仕方がないとは思う」とした一方で、「近くで知り合いが襲われたりしている現実があり、かわいそうだがやむを得ない」と話した。

 野生動物の生態に詳しい岩手大学の青井俊樹名誉教授も「一般的には麻酔で眠らせて山へ帰すのがベスト。だが、現場で麻酔銃がすぐに整うことはまれで、やむを得なかったのだろう」と署の判断に理解を示した。一方、校庭で射殺されたことには、「子供たちに強烈な記憶が残り、クマは出たら射殺するものだと思わないか心配」といい、ケアの必要性を訴えた。

 また、小学校のある合併前の旧上宝村で生まれ育った谷村昭次市議は「山間地域にとって子供は宝。地域全体で守る意識は強く、(今回の措置は)緊急避難で仕方ない。これを機に、子供たちにもクマとの共存の取り組みについて伝えていきたい」と話した。

 高山市内では、4月25日に同市石浦町で玄関先にいた70代女性ら3人がクマに襲われて重軽傷を負い、襲ったクマが射殺された。6月22日には同市丹生川町で山菜採りをしていた80歳代の男性が突然、後ろから襲われて重傷を負い、クマは逃げた。

 クマの目撃件数も4月以降で275件(9月27日時点)に上り、大量出没した平成26年(年度総数475件)同期の202件を上回っている。

 例年、冬眠を控えた9〜11月はクマがエサを求めて人里まで下りるため目撃件数が増えるが、最近は山と里を隔てた雑木林にまで宅地開発が進む一方、過疎化の影響でかつて人が暮らしていたエリアに人の気配がなくなったこともあり、クマの生息範囲が広がっていることで、クマの被害が増えているという。

 谷村市議は「出くわすのは、人にとってもクマにとっても悲劇につながりかねない」と話し、クマに遭遇しない環境づくりの重要性を強調。市はHPやメールでの告知のほか、登山道入り口に立て看板を立てるなどさまざまな方法で注意を呼びかけている。

おわり