10月上旬、高校生が授業中に若い男性教員に暴力を振るう画像がインターネットに流れ、その後に高校生が逮捕されたというニュースがあった。事件の発端は、教師が生徒に対してその授業では使ってはいけないIT機器を使うのを注意したことだそうだ。

今回の映像は一般的には確かに衝撃的だっただろう。しかし、生徒が荒れた中学校に勤務する教員や、「教育困難校」の教員にとっては既視感のある場面だったと思う。似たような場面に日常的に遭遇し、専守防衛に努めている中学・高校教員は全国に大勢存在する。

だが、教員に対してあのような態度を取ってきた生徒たちが大学、特に「教育困難大学」に入学していることを、当事者である大学関係者もあまり気にしていない。彼らは「自身の学びを助けてくれる人」として教員に一目置く、ということはない。逆に力関係として下に見てさえいる。そうした生徒たちが、高等教育の場に入ってくるのである。

いわゆる進学校でない高校からの大学進学者は、推薦入試やAO入試を利用して進学する者が多いことは、これまでにも何度も述べてきた。大学を志望する生徒たちの多くは、少なくとも3年生の1学期頃からは、教師の指導に従って準備を行う。一般的には10月上旬あたりからAO入試が、11月上旬からは推薦入試が始まり、パラパラと合格が決まっていく。

すると、その頃まで自分の進路をまったく気にしていないように見えた生徒たちが、突然、担任や進路指導教員に「せんせー、俺、大学に行こっかな。親も行けっていうし」などと口にするようになる。このような生徒はおおむねこれまで教員をバカにした態度を取り続け、勉強や部活動にも熱心でなく、努力や我慢が苦手なタイプの生徒たちである。

すでに推薦入試などの本番が始まっているので教員は非常に困惑するが、本人と保護者が「大学に進学したい」と思っているのであれば、止めることはできない。もちろん、一般入試に通る学力はないので、推薦入試の日程が残っている大学を探すことになる。

やりたいことがまったく決まっていないので、学部・学科選びも大変だ。結局、いわゆる「潰しが利く」といわれている社会科学系や文系の学部を選ぶことになる。大学側がいろいろと工夫して決めた学部の特色などもこのタイプの生徒たちはまったく意に介さない。ただただ「楽な大学」を選びたいと考えるのみなのだ。

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